第61話汚れちまった悲しみに・中原中也:キラキラ光る幼い心が失ったもの

 中原中也の「よごれちまった悲しみに」を読みました。

詩集『山羊の歌』に掲載されている一篇です。

『日本の名詩集第4集』 (電子ブック版)で読みました。

青空文庫でも読めます

https://www.aozora.gr.jp/cards/000026/card894.html


中原中也は一九〇七年(明治四十)年生まれの詩人。

東京外国語学校(現・東京外国語大学)フランス語科に学び、ランボー詩集などの翻訳も手がけています。


===================


汚れちまった悲しみに…


         中原中也


汚れちまった悲しみに

今日も小雪の降りかかる

汚れちまった悲しみに

今日も風さへ吹きすぎる


汚れちまった悲しみは

たとへば狐の革裘かはごろも

汚れちまった悲しみは

倦怠けだいのうちに死を夢む


汚れちまった悲しみに

いたいたしくも怖気おぢけづき

汚れちまった悲しみに

なすところもなく日は暮れる…


===================


 有名な詩です。流れるような、あるいは大きく波打つような動きのある言葉で、読み手の心の中にからみついてきます。


 あまり細かい意味の解釈は必要がないような気がします。ただ、感じるままに受け止めればいいのだと思います。


 私が少女の頃に書いていた詩にも、よく「悲しい」とか「哀しい」ということばを使っていました。

今思えば、本当の悲しみもまだ知ることもなかった幼い心に、悲しみはなんとなく美しく純粋なものような気がしていたのです。


 中原中也の表現したい悲しみもまた、世俗にまみれた大人の悲しみとは違うような気がします。幼心の水晶のように光るイメージ、少年の頃の純粋な心が、大人になって汚れてしまったと感じたのかもしれません。

(記:2016-11-14)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る