第22話Enfance finie・三好達治

三好達治の「Enfance finie」を読みました。

青空文庫で読めます。

https://www.aozora.gr.jp/cards/001749/card55797.html

詩集『測量船』(一九三〇年・第一書房)に収められた詩です。


三好達治は一九〇〇年(明治十三年)生まれ、大阪出身の時人、翻訳家、文芸評論家です。


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Enfance finie


      三好達治


海の遠くに島が……、雨に椿の花が堕ちた。鳥籠に春が、春が鳥のゐない鳥籠に。


約束はみんな壊れたね。


海には雲が、ね、雲には地球が、映つてゐるね。


空には階段があるね。


 今日記憶の旗が落ちて、大きな川のやうに、私は人とわかれよう。ゆかに私の足跡が、足跡に微かな塵が……、ああ哀れな私よ。


僕は、さあ僕よ、僕は遠い旅に出ようね。


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アンファンス フィニ。フランス語で青春時代の終わり、過ぎ去りし少年時代、という意味のようです。


 すっかり忘れていたのですが、中学、高校生の頃に大好きだった詩でした。

久しぶりに読んでみて、「そうそう、こんな感じだった」と、当時読んだ感覚がよみがえりました。


 もの悲しくて、感傷的で、感受性豊かで。大人になる一歩手前の透明な少年の心が描かれているような気がします。


 ね、ね、ね、とたたみかけるような、ひとことづつ確認しているような表現に、少年期の不安な気持ちが感じ取れます。


この詩に関しては、一語一句の意味を解釈したくありません。

読んで感じたイメージのまま、そのままで良いような気がするのです。

(記:2016-08-04)

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