第3話七夕のころ・金子みすゞ:言葉の重なりが優しい

童謡詩人、金子みすゞの「七夕の頃」を読みました。

『金子みすゞ童話全集』収録の一篇です。


 金子みすゞと言えば、東北の大震災後、テレビCMが自粛されていた時期、ACのCMで盛んに流れて注目されましたね。

私もあの時、改めて詩集を読み直して癒やされたひとりです。


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七夕のころ


   金子みすゞ


風が吹き吹き笹藪の

笹のささやきききました。


伸びても伸びてもまだ遠い、

夜の星ぞら、天の川、

いつになつたら、届かうか。


風がふきふき大海の

波のなげきをききました。


もう七夕もすんだのか、

お空の川もうすれるか。


さつき通つた旅びとは、

五色のきれいな短冊の

さめてさみしい、笹の枝


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 この詩は音読して味わいたい詩です。音の重なりが心地よく響きます。


「笹のささやき」「なげきをききました」「さめてさびしい笹」

日本語って美しいな、優しいなと実感します。


 三節に分かれている詩は、最初に手が届きそうも無い遠い空を詠み、次に、大海原、最後に旅人を歌っています。


つまり、天(夜空)と海(大海)と地(旅人)と、この地球にあるものすべてに目を注いでいるように感じます。

そして、どの節にも風が吹いて、空と海と地上を繋いでいるのです。風はもしかしたら「空気」かなと想像しました。


 牽牛けんぎゅう織女しょくじょの七夕自体を表現した詩ではありませんが、少し寂しくて、天の川が美しい七夕の頃の夜の風景が目に浮かびます。

(記:2016-07-07)

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