第七話:排除


 私の担当する世界の名はラミシス。


 私が女神として降臨して天地創造をしたと言う事になっている世界。

 そして標準的なファンタジー世界で、新人教育をサポートするオーブによるプログラムでちょっとベタだけど初めてでも新世界創世が出来て運営がしていけるはず。


 普通なら順調に王国を建立して発展をして行き適度な魔獣や魔物と小競り合いなんかを起こして安定した状態になるはず。


 イベントでは無いけど、ダンジョンや突発的に発生する魔人による人間界への適度なプレッシャーと、勇者の称号は有るけど勇者システムが無いおかげでめちゃくちゃな超越した力はなく、一致団結して魔人たちに対抗するというはずなのだが……



「名前はエリザベート。十六歳、女で称号が勇者では無く『イレギュラー』の称号を持ちレベルは軒並みMAX、更に辞書に収まるかどうかわからないくらいの大量のスキルまで持っている……」


 ぶっちゃけこれって私たち女神がこの世界で暴れまわっていると言うのに等しい。

 こんなのいくら魔人や魔王が発生したってかないっこない。


 そして性格が良いからこの世界の人々に愛されまくっている。



「くっくっくっ、しかしそんな貴女はこの世界では邪魔者よ? 明日の進捗確認までにあなたの存在を消し去る。でないとこの私が教育係の女神様にまた体で色々覚えさせられてしまうから……」



 やだよあんな仕打ち。

 もうこっちの世界に帰ってこれなくなる。

 

 危うくあの女神様を「お姉さま♡」とか呼びそうになるのだもの、本来私はノーマルなのよ?



「とにかく、この世界にいる連中じゃどうにもならないから神力を使ってエリザベート、あなたをこの世界から排除しちゃいます!!」


 言いながら私は新たに作成した世界を見る。

 基礎プログラムで作り上げたこの世界はデフォルトで天地は出来ているけどそれ以外は何も無い。

 自己負担で神力と魔素を投資して作った最低限の新世界。

 可哀そうだけどあなたにはこの世界で朽ち果ててもらいましょう。


「うふふふふっ、邪魔者がいなくなりさえすれば明日の提出にはちょっとパワーバランスが悪いとか言われて大目玉まではいかないで済むわね?」


 オーブに映る新たな世界は本当に何も無い場所だった。

 正直給料の一ヵ月分くらいの出費は痛かったけど考え方を変えれば神力使っちゃうけどラミシス世界で面倒なモノはこっちの何も無い世界に放り込んでおけばいい。


「ぬっふっふっふっふっ、これでラミシス世界の運営も安泰よ! さあ、消えてもらおうかしら」


 私はそう言いながらエリザベートのいる座標を確認する。

 そして好都合な事に次なる魔王軍の殲滅に一人向かっている途中だった。



「誰にも気づかれずいきなり異世界に飛ばしてあげる! さあ、消えろ、イレギュラー!」



 私は神力を注ぎ込みエリザベートのいる空間を確保する。

 異変に気付いた彼女だけどもう遅い。


 流石に高次元にいる私の行動は予測できないらしく、「未来を見据える」とか「危機察知」のスキルも反応しなかった。



「じゃあね、さようならイレギュラーさん♪」




 私はそう言いながら彼女を新しく作った何も無い世界に転移させるのだった。


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