第五話:テミア背水の陣
「な、なんで……」
私はオーブを見ながらその数値化された状態と自分が担当している世界を見比べる。
ダンジョンを紛争地帯に発生させ、戦争どころでは無いようにしたらあふれ出てくるモンスターに一般兵士たちがやられて大騒ぎ。
更に各国がそのダンジョンを何とかしようとするから派遣された軍隊も雇った冒険者たちもダンジョンの肥やしとなる状況。
かろうじて人類はダンジョンから漏れ出るモンスターたちを食い止めるのが精いっぱいの状況。
「うーん、こんなになるとは思わなかった。でも一応戦争は落ち着いたからダンジョンでモンスター退治とかしてもらう方に注力してもらってそこから持ち帰るレアアイテムとかで国力を回復してもらえば……」
ぴろりろり~ん!
通知音に気付くとダンジョンが吸収した負の感情や人間の魂を糧にとうとうラスボスの魔人が発生した。
「あ、魔人が発生したか。どれどれ……」
そのステータスを見てぎょっとする。
この数値、並の冒険者や軍隊じゃどうしようもない。
なんでこんな強い魔人が出来あがってしまうのか?
「こんなんじゃダンジョン攻略なんて夢のまた夢…… どうしよう……」
ぴろりろり~ん!
ぴろりろり~ん!ぴろりろり~ん!
ぴろりろり~ん!ぴろりろり~ん!
「ひっ!?」
通知音が連続で鳴り響き各ダンジョンで魔人が生まれた。
「ちょ、ちょっとぉ! なんでそんなにたくさん魔人が発生するのよ!?」
悲鳴に近い叫び声で状況を確認すると魔人発生でダンジョンのレベルがどこもかしこも上がっている!?
「こ、こんなのじゃ経験値上げてレベルアップする前に人類が滅んじゃうわよ!!」
あわあわ言いながら慌ててダンジョンのステータスを落とそうとすると、吸収した余剰エネルギーが具現化してダンジョンの下層で更に強力なモンスターが発生する。
「うぎゃぁーっ! やばいやばい! どうしよう!?」
こんなバランスの悪い状況じゃダンジョンから魔人率いる魔物の軍団が人間たちの国を襲い来るのは時間の問題となってしまう。
「そ、そうだ! 私を信仰する女神教の聖なる力を使って魔物たちを押さえてバランスを……」
そう思い神官や司祭など上位の人間のステータスを覗き込むと全部だめじゃん!!
「何このステータス!? 小悪党か悪徳商人のような数値!? 信仰心ポイント三って何よっ!?」
いくつか宗派が分かれてはいるけど、どの宗派も腐りに腐っていて神格が得られていないから神聖魔法すら使えないのもいる。
「だ、だめだこいつら…… 戦いの中で戦いを忘れるような連中をどう導けと?」
頭を抱えながらそれでもあれやこれやと神力も投入してやっていくと、魔人達の中でとうとう魔王になっちゃった個体が出現!
「いやぁあああぁぁぁっ! これじゃぁ人類が滅んじゃうぅぅうううううぅっ!!」
どうしよう!?
もう時間が無いってのに!!
このままオーブを教育係の女神様に見せたらきっと大目玉喰らう。
いや、最悪教育的指導されちゃう。
あの女神様、にこやかな顔しながらかなりきついお仕置きをするらしい。
「ま、まずい、どうにかしなければ…… ん?」
どんどんと人間側の勢力が魔王軍に押され始めた頃、いきなり人族の中にやたらと凄いステータスを持つ娘が現れた?
彼女は破竹の勢いで魔王軍と戦いその勢力を押し戻している。
「なにこれ? こんな飛びぬけたステータス、有り得ない!」
これって一体……
私はその娘の行動にしばし注目するのだった。
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