第十五幕 18 『神々の力』


ーー デルフィア王国 対グラナ戦線 ーー



 勝利の女神エメリリアの助力を受けた、ジークリンデ率いる連合軍は快進撃を続けていた。


 感覚・知覚の共有、更には戦場を俯瞰して的確な状況判断が可能となった指揮官ジークリンデからのリアルタイムな意思伝達により、集団でありながら一つの『個』として動く軍勢は、まさに無類の強さを発揮するのだった。









 そして、更には……








「さあ幻竜たち、黒き巨人を滅しなさい」


 月の女神パティエットの『幻想結界』によって喚び出された幻獣のドラゴンたちが、黒魔巨兵と戦いを繰り広げていた。



 古龍に匹敵する力を持つ幻竜。

 それが複数体現れ、ブレスを放って巨人を攻撃するのは圧巻の光景だ。



 それに加えて。




「よし、次はこれを試してみるかのぉ」



 幻竜たちに混じって空を舞うのは技巧神オーディマ。

 彼は小さな身体には似つかわしくない、巨大な筒のようなものを構えて巨人に向けている。


 もし、この場にカティアがいたら……それを『バズーカ砲』のようだと思った事だろう。



 パシュッ……!



 ……少し間の抜けた音とともに、筒から火球が放たれる。



 そして……!




 ドゴォーーーーンンッッッ!!!!!



 巨人に命中すると大爆発が巻き起こった!!




 爆煙が晴れたあとには、身体の半分を吹き飛ばされた黒魔巨兵の姿が。

 即座に再生を開始しているが、そのスピードは遅い。



「ふむ……上々じゃな。中々試す機会がなかったからのぉ……この際、色々とデータを取らせてもらうぞ」



 支援程度……と言っていたはずのオーディマであるが、その攻撃は幻竜と変わらない苛烈なものであった。












ーー シャスラハ王国 対グラナ戦線 ーー



 シャスラハ王国の戦線では、シャハルとシェラフィーナの兄妹神による魔法攻撃によって、侵略軍に壊滅的な被害を与えていた。



「よっし!ここまでやっときゃ、後は連合軍に任せてもいいだろ!」


「そうですわね。後は……」


「あっちのデカブツだな!」



 そう言って、その場は連合軍に任せる事にした二柱は、イクセリアスが足止めしている黒魔巨兵の方へと向かう。














「終わったか」


「ああ!あとはこいつらを何とかすりゃ、終わりだ!」


「イクセリアス、封印を解いて下さいまし」



 イクセリアスの時間凍結の結界は非常に強力だが、外部からの干渉も一切受け付けなくなるので、攻撃のためには解除する必要がある。



「分かった。シャハル、封印を解いたら我と……」


「おうよ!アレをやるんだな!任せとけ!」


「では、私は……再生など意味をなさないように滅してしまいましょうか。中々の魔法耐性があるようですが……まぁ、力づくで何とかなりそうですわね」




 そして、人々は再び三神の力を目の当たりにする。




 空間神と時間神が意識を集中させると、二神の周りの景色が歪み始める!


 そして、彼らが突き出した掌の前に歪みが収束していき、バチバチ!と雷光をまき散らす黒い球体となった。



「「『時空圧壊重滅波』!!!」」



 二神が撃ち出した黒球は、猛スピードで黒魔巨兵の一体に着弾!!


 すると……!!



 ズゥーーーーンッッ!!!



 腹の奥底まで響く重低音が辺りに木霊する!!


 そして、黒魔巨兵の身体は瞬く間に黒い球体へと吸い込まれてしまった。







「……流石にあの二人の協力攻撃の前には、再生能力など無意味ですわね……。では、私も」



 一瞬で黒魔巨兵を滅ぼした二神の攻撃を横目に確認したシェラフィーナは、自身も攻撃を行うべく魔力を高め……



「尽く魔を滅せよ……[神炎]!!」



 放ったのは退魔系魔法の最高奥義。

 人間たちの間では伝説でしか語られていない、滅魔の究極魔法だ。



 黄金色に眩しく輝く破邪の劫火が、黒魔巨兵の一体を包み込む!!


 それは音もなく燃え続け、巨人の身体が瞬く間に溶けて消えていく……




 そして、黄金の炎が消え去ったあとには、なんの痕跡も残らなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る