第十五幕 5 『神威降臨〜自由の女神・うつろいし神・知恵の神』
ーー レーヴェラント王国 対グラナ戦線 ーー
レーヴェラントのグラナ国境付近。
他の戦場と同様に、ここでも大規模な戦闘が行われていた。
レーヴェラント王国軍を中心とした連合軍の総大将は、第二王子のアルフォンス。
そして……
「イスファハンのダンナ。ウィラーから戻って早々、大丈夫ですかい?」
レーヴェラント国軍に協力する支援軍の一つ、カカロニア軍の指揮をとるイスファハンに声をかける男がいた。
「ああ。全く問題ない。お前こそ……自由気ままな冒険者がこんな戦いに参加するなんて、随分もの好きじゃないか?ラウル」
男……ラウルの言葉に、ニヤリ……と不敵な笑みを浮かべながら答えるイスファハン。
「かも知れないっすけどね。でも、そんなもの好きは結構いるみてえですぜ」
そのやり取りは王族と一介の冒険者と言うよりは、互いに信頼を寄せる戦友のようであった。
「ベルトラン、戦況は?」
イスファハンが副官のベルトランに戦況を確認する。
開戦後しばらく経過したが、これまでの報告では戦力は拮抗していると言うものであった。
しかし……
「……正直なところ、厳しいですな。やはり魔物が厄介です」
「だなぁ……こりゃあ、指揮はアルフォンス殿に任せて、俺も前線に出るべきか……」
「お、いよいよですかい?」
イスファハンがそんな呟きを漏らし、それに対してラウルが「待ってました」と言わんばかりに返した。
と、その時。
どこからともなく何者かの声がかかる。
「いや、神々のご助力が得られると言う話だから……もう少し我慢して耐え、損耗を抑えるべきでしょう」
「「「誰だっ!?」」」
突然の声に3人は慌てて、バッ!と辺りを見回す
「……うん。まぁ、もう慣れてるけど。一応これでも総大将なんだよなぁ……」
「「「あ……」」」
イスファハン達が話をしていたのは、本陣の天幕である。
当然ながら、そこの主は……
「あ〜……アルフォンス殿、すまない。いたんだったな」
「そりゃあね……。と言うか、今しがた『指揮を任せる』とか言ってたじゃないか……」
相変わらずの存在感の無さ。
それなのに、将として非常に優秀だと言うのだから驚きである。
「だが……神々はいつ降臨されるんだ?いつまでも消極策では……」
と、イスファハンが反論しようとしたところで、何やら外が騒がしくなった。
そして、慌てた様子で天幕に入ってきた兵が報告を上げる。
「アルフォンス様!!そ、空から……!!」
「どうした!?」
兵のただならぬ様子に、アルフォンス達は天幕の外に出て空を見上げる。
すると……
「おぉ……」
「……エメリナ様が降臨されたときと同じだ」
先日、ウィラーでその光景を見たイスファハンは、それが何であるのかが分かった。
即ち。
「神々が降臨なさるぞ!!」
『『『神威降臨……』』』
天より響き渡る厳かな男女の声。
そして、雲間から差し込む光とともに現れる三柱の神。
自由の女神と呼ばれ、レーヴェラントの守護神でもあるリヴェティアラ。
うつろいし神オキュパロス。
知恵の神ヘリテジア。
伝説の三神が、ついに地上へと降臨するのだった……!
「みんな、遅くなってごめんなさいね〜。でも、私達が来たからには、もう大丈夫よ。さあ、行くわよオキュピー」
「オキュピーはヤメロ。……まぁ、オメーの言う通りだ。俺たちが来たからにゃ、邪神の手先など纏めて千切ってくれらぁ。なぁ、ヘリテジアのダンナ。久しぶりに暴れてやろうぜ!」
「……」
リヴェティアラは緊張感も気負いもなく、オキュパロスは気合十分といった感じだ。
しかし、相変わらずヘリテジアの反応は薄い。
「かぁ〜!!こんな時ぐらい、もっと気合い入れていこうぜ!!」
「……あぁ。程々にやる」
……そんな三神の会話を聞いていた連合軍の兵たちは、神々に抱いていたイメージとのギャップに戸惑いを見せる。
しかしその後、彼らの力を目の当たりにし、神々の偉大さを身をもって知る事になるのだ。
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