第十四幕 39 『見極め』


ーーーー シェラ ーーーー



 ついに始まった占星術師との戦い。


 先ずはこちらの前衛から先制攻撃を仕掛けたけど……私はその様子を注意深く見守る。


 私と同じ魔族と言えど、異能の力は未知数。

 慎重に見極めなければならない。



 そして、前衛の皆の息のあった連携攻撃が次々と繰り出されるが……その結果は、不可解なものだった。



 確かに攻撃は当たるはずだった。

 占星術師は回避行動を取っていなかった。

 それどころか、その場から一歩も動いていないはずだ。

 攻撃の軌道が逸れたわけでもない。


 占星術師以外、誰もが予想だにしなかった結果。

 そして、誰も、何が起きたのかすら分からない。

 それは皆の驚きようを見ても分かる。



「……お姉ちゃんたち、いま何が起きたのか分かる?」


「いえ……」


 ミーティアちゃんでも分からないのね。

 神の依代たる彼女の目ならあるいは……と思ったのだけど。



「目の錯覚……というわけでもなさそうね。とにかく、私達も攻撃に参加しましょう!」


 あれが一体何なのか?

 更に手数を増やせば、何か分かるかもしれない。


 そう思った私は後衛のメンバーに攻撃参加を促す。


「うん!」


「おっけー!全方位から飽和攻撃なら……!」


 ミーティアちゃんと、メリエルさんが応じるけど……



「……ごめんなさい、私はもう少し様子を見させてもらっても良いですか?」


 と、ステラさんが言う。


 そういう間も、真剣な表情で今も行われている前衛陣と占星術師の攻防を注視していた。


 ……どうやら、何か思惑がある様子ね。



「分かったわ。ステラさん……見極めをお願いね」


「はい。……もう少しで、何か掴めそうな気がするんです」



 ……頼もしいわ。


 私は、ずっと一人で何とかしようとしていたけど……仲間がいると言うのは、やっぱりこんなにも心強い事なのね……


 かつての、テオフィールのパーティーを思いだす。

 あの時も皆で力を合わせて、どんな困難にも立ち向かった。


 だけど、結末まであの時と同じにする訳にはいかない。

 まだ若い彼女たちが悲しむ顔は見たくない。


 いざとなれば、私の命に代えてでも……








ーーーーーーーー







 激しい攻防が繰り広げられる。


 後衛の魔法攻撃も加わり、手数においては敵を圧倒している。


 それだけではない。

 神界で神様たちから加護を授かった事や、魔法や武技も鍛えてもらった結果、私達の個々の実力は以前とは比べ物にならない程上がっている。


 洗練された技から繰り出される斬撃や、神代の攻撃魔法が、息のあった連携によって占星術師ただ一人に襲いかかる。


 これまで戦ってきた相手ならば、もう既に決着がついていてもおかしくない。





 それなのに!!



 攻撃は全く当たらない!!



 最初の攻撃時と同じように、向こうは回避行動を取っていない。

 私の狙いが外れているわけでもない。


 なのに……ただそこには、『攻撃は当たらなかった』という結果だけが厳然と存在するのみ。



 このあまりにも不可解な現象。

 占星術師の異能であることは間違い無いと思うが……その正体を見破れない。



 幻術なのか?

 それとも、認識阻害のような精神干渉を受けているのか?

 それは、もしかしたら『占星術師』の名に関連するような能力なのかも知れないが……


 幸いにも、相手の攻撃力はそれほどでもないようで、こちらも今のところ被弾はしていないが……

 異能の正体を突き止めないことには、突破口が開けない。


 ともすれば焦りそうになる気持ちを抑え、何とか均衡を維持する。




 ……ふと、そんな私の視界の端にステラの姿が映った。


 彼女は攻撃には参加せず、私達の戦いの趨勢をじっと見守っている。


 その意図は直ぐに分かった。



 ……ステラ、頼んだよ!!


 ヤツの力の秘密を暴いて!!

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