第十三幕 47 『森都防衛戦』
美しき森の都モリ=ノーイエは今、戦火の只中にある。
劣勢にあるウィラー王国軍の力となるべく、私達は手分けしてそれぞれの戦いの場に向かう。
大軍での戦いともなれば、私のスキル[絶唱]による支援を行いところだが……
実は最初から混戦状態だと敵味方の識別が困難になり使い難いのだ。
明確に敵味方が別れていた開戦時から戦闘参加出来てたなら……あるいは、敵が魔物のみだったなら識別も容易だったのだが。
なので今回は私も純粋な戦闘要員として動く事になる。
「テオ、この辺で二手に別れよう」
「……分かった」
途中までテオと一緒なんだけど、今回の作戦は各々散開して行動する事になっている。
少し返事まで間があったのは、単独行動を心配してくれてるのだろう。
「今更だが、大丈夫なのか?カティアは対人の実戦経験は……」
あ〜……そっちも心配してくれてるのか。
テオが言わんとしてるのは、ようするに……『人を殺せるのか?』と。
確かに私は人を殺した経験は無い。
だから……
「殴り倒して無力化するから大丈夫。戦闘不能にさせれば同じでしょ?」
「それはそうだが……」
「甘いかもしれないけど……シェラさんやエフィとの約束もあるから。まぁ…手加減するつもりはないから、骨の一本や十本は覚悟してもらうよ」
カルヴァードの国々とグラナの国交を樹立する。
シェラさんとリディアがかつてした約束は、今は私とエフィの願いでもある。
そのためには、出来る限り憎しみが生まれるような事は避けたい。
「そう……だな。俺も極力そうしよう」
「うん。でも、無理は禁物。一番の目的は森都防衛、そして自分の命も大事にね」
「ああ、もちろんだ。……よし、俺は向こうに行く。武運を!」
「またね!!」
そして私とテオは別々の戦地へ。
他のみんなもそれぞれ向かってるところだろう。
ロビィはメリエルちゃんに付いていった。
ーーーー イスファハン ーーーー
森都北街区。
戦地となってしまったそこは、想像していたよりは幾分かマシな状況ではあった。
ちらほらと火の手は上がっているが、そこら中に延焼する程ではない。
戦闘が始まったのが昼食時だとすれば……おそらくは、逃げる際の火の不始末による失火だろう。
もう戦闘の気配はすぐそこだ。
少しばかりの緊張と高揚感によって、俺の意識は戦闘モードへと切り替わっていく。
前に出て戦うのはレーヴェラントの魔軍襲来のとき以来か。
以前テオフィルス殿に教わった、
そして、いざとなれば……『千変万化』の力を使う。
以前は
他にも色々と応用ができるはず。
そして、俺は建物が立ち並ぶ街中を駆け抜け、やがて多くの兵と魔物が入り乱れる戦場の一つへと辿り着いた。
さぁ……行くぞ!!
「我はカカロニア王国のイスファハン!!ウィラー王国軍に助力する!!グラナの者どもよ、命が惜しくなければかかってくるがいい!!」
剣戟の音が鳴り響き、血飛沫が舞う凄惨な戦いの場。
俺は名乗りを上げながらそこに参戦する。
駆け寄りざま手近の魔物を数体屠る。
オークやゴブリンなど相手にもならない。
他にもオーガやらトロールやら……様々な種類がいるが、今のところそれ程突出した脅威度のヤツはいない。
それでも一般兵にとっては脅威だろうし、だからこそ劣勢なわけだが。
「カカロニアの……イスファハン王子!?」
「今は一介の戦士、ただの助っ人だと思ってくれ!!取り敢えず魔物はなるべく俺が引き受ける!!お前たちはグラナ兵を頼んだ!!」
「……はっ!!!」
よし。
突然の参戦だから勝手に俺が指揮するわけにはいかないが……これくらいなら後で文句を言われることもないだろう。
「カカロニアの王子だと……!?」
「討ち取れば名を上げるチャンスだ……!!」
おっと、グラナ兵は任せるとか言ったけど、どうやらあちらさんのターゲットになっちまったみたいだな。
まあいい、寄らば全て斬り伏せるだけだ!!!
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