第十三幕 37 『縁』
「……神狼」
メリエルちゃんの呟きに反応して、神狼は彼女に歩み寄る。
心なしか、穏やかな微笑みをたたえてるような感じがする。
尻尾がゆらゆら揺れてるのは、警戒を解いてリラックスしてると言う事だろうか。
神々しさは変わらないが、先程までの強大なプレッシャーは鳴りを潜めた人懐こい様子の神狼は……ぶっちゃけ可愛い。
ようするに。
モ
フ
り
たい!!!
ずっと歩き通しだったから、そろそろ休憩も必要だし!
私が手をワキワキさせてターゲット・ロック・オン!しようとしていると。
「……あれ?もしかして……ロビィ?」
『ウォンッ!!』
メリエルちゃんに名前を呼ばれると、神狼は嬉しそうに一声吠えて尻尾をブンブンと振り回す。
「あれ?メリエルちゃん、お知り合い?」
「うん、そうみたい!うわぁ……久しぶり〜!!」
『くぅ〜ん』
甘えるような声を出してメリエルちゃんにすり寄るロビィ。
私の眼前には今……
幼女(同い年)が大きなワンコ(狼)に抱きついてモフモフするという眼福な光景が広がっていた。
あぁ……
「この子はねぇ……私が小さい頃、森で迷子になったと時にいつも助けてくれたんだ〜」
『ウォウ』
「あぁ、やっぱり昔から良く迷子になってたんだね……」
王女様がしょっちゅう森で迷子になるって……やっぱりウィラー王家は大らかというか、放任主義と言うか……
普通は王族が外で遊ぶ事だって中々出来ないと思うけど。
「お姉ちゃんもね、いつも探しに来てくれて……ロビィと一緒に街に帰ると、困ったような顔をするんだけど、『お帰りなさい』って言ってくれて」
昔を思い出しているのか、懐かしそうに……しかし、切なそうに語るメリエルちゃん。
今もメリエナさんの事を思って、一刻も早く早く助けに行きたいと考えてるのだろう。
「メリエルちゃん…………必ず、助けようね!」
「こんなに凄い防衛体勢だもの。きっと、外から助けが来るのを信じて今も頑張ってるはずよ」
「
私とステラ、ジークリンデ王女の激励の言葉に、テオとイスファハン王子も同意して力強く頷く。
「みんな……うん!頑張ろう!」
『ウォウッ!』
なお、このやり取りの間……私とメリエルちゃん、そしてジークリンデ王女はロビィに抱きついて、柔らかな毛皮を堪能中だ。
シリアスな会話の間もだ!
モフモフは正義だから!
「それにしても……ふわぁ〜、柔らかくて暖かくて気持ちいい……爽やかな森の香りがするし。そう言えばポチも同じような匂いがしたなぁ……」
『ワフ』
「あぁ……
モフモフ堪能組には加わらず、何だか苦笑して見ていたステラが私の呟きに答える。
「え?そうなの?毛色がかなり違うけど……」
「幼体なのよ。と言うか、幻獣って召喚者の力によってその姿や能力が左右されるのだけど……私はまだ未熟だから、あの子の本来の力を引き出せてないの」
何だか悔しそうな表情でそんな事を言うけど……
「今でもポチは十分強いのに……まだ成長の余地があるなんて凄いじゃない」
「……ふふ、ありがとう。そうね、もっと皆の力になれるよう、精進するわ」
そうそう、何事も前向きに考えないと。
「実はね……あの子も、この森の神狼たちの祖先も、元を辿ればアダレットの森に住んでいたのよ」
「え、そうなの?それは初耳だな〜」
「アダレット王家の伝承でしか伝わってないから……。月の女神パティエット様は
「へぇ〜……」
「その方が魔境の森で暮らすのを心配して、パティエット様が使役していた番のルナ・ウルフの何組かを、森の番人代わりに連れてきた……と言われてるわ」
「ほぉ〜……」
「そうなんだ〜」
意外なところで繋がってるものだ……と、しきりに感心してしまった。
「だからね、同じ盟約の十二王家という以外にも、ウィラーには縁を感じていたの。もちろん、メリエルが大切な友人だって理由も大きいわ」
そうだよね。
色々な『縁』があって私達はここにいる。
それは遥か昔から受け継いだものだったり、新たな繋がりだったり。
それはきっと、何かを成し遂げるための大きな力となるのだろう。
「さて……休憩は終わりにして、そろそろ先に進もうか」
『ウォンッ!!』
「あ、ロビィ、先導してくれるの?」
『ウォウッ!!』
そうして私達は頼もしい味方を得て、更に森の中を征くのであった。
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