第十二幕 26 『カティアVSガエル 死闘』
私の目の前で大剣を構えるガエル君。
それは、一見して普段と変わりない姿なんだけど……
先程感じた違和感の正体に、私はすぐに気が付いた。
だけど、それはあまりにも信じがたく……戸惑いながらも私は彼に問う。
「なぜ……あなたからこの気配を感じるの?これではまるで……」
「それは俺に勝ってから聞けば良い。……だが、一つだけ教えよう。俺は『魔族』ではない」
「!!」
そう。
私が感じた違和感の正体。
それは、彼から『異界の魂』や『魔族』の独特な気配を感じたからだ。
それは今まで相対してきた者たちと比べれば僅かなものなんだけど……間違いなく同種のものであることが、理屈ではなく私には分かるのだ。
でも、彼は魔族では無いと言った。
確かに、あの圧倒的な力を感じるほどではないから、それは確かなのだろう。
ではなんなのか?
これまでの学園生活の中で……いや、ついさっきまで大講堂の壇上でも一緒だったが、その時はこんな気配はしなかった。
……勝てば教えてくれると言ったね。
良いでしょう。
だったら全力をもって彼を打倒するだけだ。
私の戦意の高まりを察知したのか、ガエル君は更にどっしりと低く構えて、私の攻撃を受け止める体勢だ。
「いくよ」
私は短く宣言して、その場から一足飛びで距離を詰める。
正真正銘、手加減抜きの『極みの一撃』だ。
ガギィンッ!!
並大抵の実力では視認することすらできないその一撃を、しかしガエル君は即座に反応して大剣を盾にして防いでみせた。
やはりか。
防ぐであろうことは分かっていた。
もはや彼の実力は、かつてのそれではない。
そのイメージは捨てろ。
いま眼の前にいるのは紛れもない強者だ。
私は、そう認識を改めて、再び彼と対峙する。
ーーーー 大講堂 ーーーー
「……これは」
「一体どういうことですのっ!?」
「お、落ち着いて……ルシェーラちゃん……く、苦しい……」
「あわわ……ルシェーラちゃん!レティが落ちかけてるよ!?」
大講堂でカティアとガエルの戦いをモニターで見ていたルシェーラたちであるが、二人が互角の戦いを演じているのを見て驚愕していた。
ルシェーラなどは興奮のあまり、思わずレティシアの胸ぐらを掴んでガクンガクンしている。
「はっ!?も、申し訳ありませんわ……つい」
「ふぃ〜……助かったよ、メリエルちゃん」
「でも、一体どういうことかしら?カティアは完全に本気で戦ってるわよ、あれ」
シフィルの言う通り、
モニター越しでも、それは分かった。
「実力を隠していた……と言う事ですの?」
「……いえ、そうじゃないと思うわ。勘だけど」
「じゃあ、あれは一体……?」
「分からない。だけど、何だかまともじゃない感じがするのよね……メリエル、何か知らない?」
「へ?なんで私に聞くの?」
「同じクラスでしょ。それに、あなたガエルに懐いてるみたいだし」
「懐いてるって……私は犬じゃないよ。でも、ガエルは良い人だよね」
「……この際、人の良さは関係ないんだけど。ま、分からないか」
今のガエルが普通ではない事は、本気のカティアと互角に戦ってることから分かるが……その理由については結局のところ何も分からなかった。
そして、彼女たちはただモニター越しに戦いの行方を見守るしかないのであった。
ーーーーーーーー
……強いっ!!
いつも通りの彼の戦い方だが、そのレベルが段違いだ。
パワー、スピード、反応速度……どれを取っても以前とは比べ物にならない。
その戦闘スタイル、その強さ。
以前は、まだ比べるべくもないと言ったが……
まるで父さんと戦ってるかのようだ。
「ふんっ!!!」
猛烈なスピードで振るわれる大剣の薙ぎ払いを、間合いギリギリで後ろに跳んで躱す。
そして、振り終わりの隙を突いて懐に飛び込みながらすくい上げるように斬り上げる一撃を見舞う!!
「せぃっ!!」
ガエル君は不安定な体勢ながら身体を捻ってそれを躱し、流されそうになる大剣を力づくで引き戻してカウンターで再び逆方向に薙ぎ払う!!
「でやぁっ!!!」
私は斬り上げの勢いで跳び上がり、薙ぎ払いを回避しながら大剣を踏み台にして更に跳躍、身を翻してガエル君の後方に着地しながら斬撃を放つが、彼はこれにも反応し前方に跳んで躱してしまった。
「ふぅ……やるね」
「……」
「一体何をどうすれば、突然そこまでレベルアップできるものなの?」
「……知りたければ」
「はいはい。あなたに勝てば良いんでしょう?」
とは言え、これは中々ハードだ。
流石に学園のイベントで
事が異界の魂や魔族に関係あるのなら、拘っている場合じゃないかも知れない。
……それでも。
やっぱり実力で打ち破りたいと思う。
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