第十二幕 25 『波乱の幕開け』


 サバイバル戦序盤、先ずは幸先よく一人撃破することが出来た。

 暫くは慎重に行動しようと思うが、気配を感じたら積極的に戦闘に持ち込んで、位置情報全開示までになるべく数を減らしておきたいところだ。


 場所は一人目を撃破した庭園から離れ、校舎と校舎の間へとやって来た。

 薔薇園や庭園ほど身を隠す場所は少ないと思うが……それでも立木の陰や建物の角の向こう側などには注意を払わなければ。





 そうして、全方位に警戒しながら歩いていると、後方より魔力の揺らぎを感じた。

 どうやら魔法で狙われているようだ。


 私は敢えて気が付かないふりをして、ギリギリまで引き付けようと考えた。

 狙撃場所を正確に把握するためだ。


 そして、一気に魔力が高まるのに合わせて、バッ!と後ろを振り返ると、ちょうど魔法が発動しようとするところだった。


 私が通り過ぎた校舎の角から、顔と魔法の杖をのぞかせた女子生徒が確認できた。

 どうやら私が通り過ぎるまでは気配を殺していたらしい。

 中々の隠密スキルだね。


 だけど、私が瞬時に振り返ったから吃驚してる。

 それでも魔力制御は最後まで乱すことなく、最後のトリガが引かれる。



「[炎槍]!!」


 そして魔法が放たれた!



 数本の炎の槍が高速で飛来する。

 


 私は念のため余裕を持って大きく避ける。



 そして、炎の槍が私に最接近したところで……


「[散]!!」


 やはりアレンジしてきたか!


 だけど、私はそれを警戒していたので余裕を持って躱すことができた。



 多少戦い慣れてる感じからして、おそらくは先輩かな?



 私は、死角が無くなるように建物の角を大きく回り込みながら彼女を視界に捉える。

 そして、先程のお返しとばかりに魔導杖カティア・スペシャルを突き出して魔法を放つ!! 



「[雷槍]!!」


 攻撃速度の速い雷撃魔法を選択。

 猛スピードで敵に襲いかかった雷の槍は、逃走しようとしていた背中を捉えて……


 パリィンッ!!



 結界を破るのだった。









「うぅ……大物殺しジャイアントキリングしようと色気を出さなければ良かったわ……」


「あはは……先輩、ドンマイです」


 撃破した女性に近付いて……良く見たら合唱クラブの部長であるクラリス先輩だった。



「もしかして、最初から気が付いていたの?隠密行動には割と自信があったんだけど……」


「いえ、魔力の揺らぎを感じるまでは全く気が付きませんでした」


「それであの反応の速さ……お手上げだわ」


 まあ、警戒はしてたからね。

 全くの無警戒だったら危なかったと思うよ。



「まぁ、カティアさんに負けるなら仕方ないか。私の分まで頑張ってね」


「はい!」



 そうして、私は先輩に別れを告げてその場を後にする。

 これで二人撃破だ。

 ……まぁ、撃破数は勝敗には関係ないのだけど。


 サバイバルの決着は、残り5人になった時点で終了して生き残った人数が多いクラスから1位2位……となる。

 人数が同じ場合は同順位だ。


 だから勝率的には消極策を取って逃げまくった方が有利なんだけど、この国の国民性からしてそれはあまり好まれない。

 全校生徒がモニターで見てるし……


 だから序盤こそ隠密行動中心でも、チャンスがあれば積極的に攻撃しようとする人が多いみたい。

 さっきの先輩みたいにね。


 なお、隠密行動からの不意打ちは実力のうちと見做されるので問題ない。





 さあ、次に行きますか!











ーーーー ステラ ーーーー


  サバイバル戦が開始された。


 先ずは地図で味方の位置を確認すると……幸いにも私を含めた三人が比較的近くに集まっているようね。

 もう一人は、残念ながらかなり離れてしまってる……それがカティアなら特に心配する必要は無いのだけど。


 取り敢えず、近くの三人は合流を目指した方が良いでしょうね。

 ただ、近くにいるとは言え、敵に遭遇しないとも限らない。

 多分、地図上に敵の光点が示されるまでは身を潜めてる人も多いだろうから、慎重に行動しなければ。



 私の初期配置は大講堂と校舎に挟まれた小さな庭園。

 隠れるところは多く、生き残りを優先するなら有利な場所だけど……

 早期に味方と合流するためにはここに留まっているわけにもいかないわね。


 再び地図に目を落として、味方の行動を予測する。

 三者の距離はほぼ均等。

 だったら落ち合う場所は……ここ、実技棟周辺になるかしら?




 そうして、私は行動を開始するのだった。



ーーーーーーーー











 クラリス先輩を下して、また別の場所へ移動する。


 今度は厩舎・馬場にやって来た。

 乗馬クラブには入らなかったけど、たまにステラと一緒に馬を愛でに来ることがある。

 その時は部長の好意で乗せてくれたりもする。






 そして、そこには一人の生徒が待ち受けていた。


 それは……



「……ガエル君?」


「……あなたを待っていた。いざ勝負……!」



 彼は大剣を構えて臨戦態勢となる。

 私もそれに合わせて薙刀を構えるが……



 何か、妙だ……


 普段の彼の気配と異なるような……?

 私の頭の中で警鐘が鳴り響く。





 そして、戦いが始まる。


 何かが起こりそうな予感とともに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る