第十二幕 23 『サバイバル〜ガイダンス』


 対抗戦は三日目、今日は私が参加する競技『サバイバル』が行われる。

 学園中が舞台になるので、本日は他の競技は行われない。


 武術対抗戦に並ぶ花形競技で、参加者以外は大講堂に設けられたモニターから観戦することになる。

 何と……学園中の至るところに撮影の魔道具が設置され、リアルタイムにモニターすることが出来るのだ!

 う〜ん……何というハイテク。



 この競技はその名の通り生き残りをかけたサバイバル戦である。

 

 これはチーム戦であり個人戦でもある。

 と言うのも、各人スタート地点がバラバラなのだ。

 先ずはチームメンバーの合流を優先するのか、それとも各個人の能力に任せて生き残りを計るのか……各クラスごとに取る戦術は異なるだろう。

 前者であればメンバー同士で連携が取れるのがメリットで、まとめて撃破されるリスクがあるのがデメリット。

 後者はリスク分散できるのがメリット、多対一の状況だと各個撃破されやすいのがデメリットか。


 私達のクラスは……一応合流は目指すが、それには拘泥せずに各自の判断で臨機応変に動く方針だ。

 ……方針という程のものではないね。

 ただ、ステラやユーグは後衛職なので、なるべく私かフリードがフォローに向かうことにはなってる。



 選手たちには結界魔法が施され、これを破られれば失格となる。


 武器は授業で使っている木剣などを使用。

 魔法は初級まで、または競技用の魔導杖を用いれば上級も使用可能だ。

 私は使用魔法の幅を広げたかったので、シフィルから例の『カティア・スペシャル』を借りました。

 何かシフィルから「絶対壊さないでよ!」って、すごい勢いで念押しされたよ……



 そして、各人には学園の地図が渡される。

 これ、実は魔道具になっていて……開始一時間までは味方だけ、それ以降はライバルたちも含めて位置が光点で示されるというスグレモノだ。

 ただ、味方は青、敵は赤で示されるのだが、それが誰なのかまでは分からない。

 それでも、このサバイバル戦には欠かせない非常に重要なアイテムなのは間違いないだろう。

 ……何というハイテクか(二回目)。



 試合開始時の選手たちの配置は、くじ引きによってランダムに決まる。

 この競技は学園中を使って行われるのだが、訓練場や一部の施設を除いて基本的に建物の中には入ってはならないことになってる。

 地図上には立ち入れる範囲は青色で示されているので分かりやすい。




 以上のようなことが、運営本部より説明された。


 今、私達参加選手は大講堂の壇上に集まって、今の説明を聞いて、これからくじを引くことになる。

 1年1組からの順番なので、私がトップバッターで引くことに。

 なお、くじの中身はスタッフに見せるだけで、仲間たちにも見せてはいけない。

 ここから先は試合開始まで仲間同士の会話も禁止となる。



 穴の開いた箱に手を入れてくじを取り出す。

 くじ……折りたたまれた紙片を開いて中身を確認する。

 そこには『薔薇園ロザリウム』と書かれていた。


 はて?

 この学園にそんなシャレオツ(死語)な場所があったかしらん?


 運営スタッフの人に渡して見せると、私の名前と場所のメモを取っている様子。


(あの〜……薔薇園ロザリウムって何処ですか……?)


 もらった学園構内図を広げながらスタッフに小声で確認する。


(……えっ!?……えと、ここですね)


(ん〜、ここは第一校舎裏手の……分かりました、ありがとうございます!)


 ……何か意外そうな反応をされたよ。

 ごめんなさい、私、花より団子なもんで。

 と言うか私の周りは皆そうだよ?

 王女とか公爵令嬢とか侯爵令嬢に、過度な幻想は持たない方が良いよ?





 私の後も皆が続々とくじを引いていき、初期配置が決まっていく。

 そして全員がくじを引き終わり、準備が整った。



「よし、初期配置は決まったな。それではこれよりサバイバル戦を開始するわけだが……結界魔法を破られた者は速やかに戦闘区域から離脱し、最寄りの建物内に避難すること。それから……」


 スレイン先生が最後に注意事項を念押しする。

 それが終われば全員が一斉に散って初期配置に着いたら開始の合図となる。





 そして先生の話が終わって、私達は大講堂を後にするのだった。

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