第十二幕 22 『対抗戦二日目の終わり』


 対抗戦二日目の戦績はこんな感じだ。


 武術対抗戦は男女ともに2回戦突破。


 フリードの試合は見てないけど、ルシェーラと同じように一瞬で決着が付いたらしい。

 ウチのクラスはみんなシフィルの応援に行ってしまったので、別のクラスの人に聞いた。

 涙目で「チクショー!!」とか言いながらすごい気迫で対戦相手の3年生をあっという間に斬り伏せたとの事。

 ……何かゴメン。


 そしてシフィル&トール君のペアによるマギ・ボールも初戦突破。

 相手のメリエルちゃん&マーク君ペアは強敵だったが、接戦の末撃破することができた。

 これは次の試合に向けての弾みになったのではないだろうか。



 そして他の競技。

 チェスのユーグは惜しくも3回戦敗退。

 相手は昨年の優勝者との事だったので仕方ないだろうが、殆ど互角の戦いだったらしく、かなり悔しそうにしていた。

 普段冷静なユーグがそんな風に感情を出すのが少し意外だった。


 その他、短距離走や長距離走(どちらも男女の合計タイムで競う)はそれぞれ5位、4位入賞とまずまずの好成績。


 今日時点での総合順位は、何と2位!

 1年生では断然トップである。



「1位は……3年1組?」


「ええ。殆どの競技で勝ち残ってるみたいですわ。武術対抗戦は男女共に昨年の優勝者を擁してます」


「あ、ルシェーラのお兄さんも1組だね。……って言うか、チェスでユーグに勝ったのがアルフレドさんなんだ」


 昨年の優勝者らしいし、流石は生徒会長と言うことか。

 知略に長けてるというか、頭脳派ってことなんだろうけど、やはりブレーゼン家の他の面々とはタイプが異るように感じる。

 別に閣下もルシェーラも脳筋ではないんだけど、武闘派なイメージの方が先行するからね。




「だけど、ウチのクラスも2位だからね。十分優勝を狙えるわよ!」


「そうだね。よしっ、みんな明日も頑張るよ!!」


「「お〜っ!!」」


 うんうん、皆気合いが乗ってるね。

 シフィルの言う通り私達のクラスにも十分な勝機がある。

 私も『サバイバル』を頑張るぞ!!












「ただいま〜」


「あ、おねえさま!おかえりなさいませ!」


「ママ〜!おかえり!」


「おかえりなさいませ、カティア様」


 王城の自室に帰ると、いつものミーティアとマリーシャに加えて、クラーナが迎えてくれた。

 そしてミロンは今回はクラーナの腕の中に抱っこされて……こちらも中々の破壊力だよ。


「あ、クラーナ。ミーティアと遊んでたの?」


「いえ、おねえさま。わたくしたちは、おべんきょうをしていたのです!」


「マリーシャおねえちゃんに、おしえてもらっていたの〜」


「あ、そうなんだ〜、偉いね〜」


 二人をナデナデすると、目を細めて嬉しそうにしてる……かわいい。

 癒やされるわ〜。

 さあ、こっちへいらっしゃい!












「で、今日は何のお勉強をしてたの?算数?国語?」


 ひとしきり撫でたり抱っこしたりして娘・妹成分をたっぷり補給してからマリーシャに聞いてみる。


「はい。昨今のカルヴァード大陸各国の情勢、流通経済における課題や展望、政治における重要人物の動向など……政治経済学の触りを少々」


「……」


「おねえさまが、『せいじ・けーざい』はあまりおすきではないとききまして!わたくしがしょうらいおねえさまを、ほさできるようにマリーシャにおねがいしたのです!」


「うに」


「……え?」


「お二人共飲み込みが早く……私も思わず熱が入ってしまい、このような時間まで、つい」


「………え?」


 この娘たち、何歳だっけ?

 チラッと机の上に広がったままの教科書らしき本を見たのたが……それ学園の教科書じゃん!!


 え?なに?チートなの?幼女無双なの?


 って言うか……お姉ちゃん、将来の女王(予定)なのに政治経済苦手なんて言ってごめんなさいね!?


 いや、イスパル王国の将来は明るいね。
























 ……ん?

 また、あの『夢』?

 連続で見るのは初めてだ……



 前回と同じく、リディアとリシィが宿の一室で話をしている場面だ。

 だが、前回と異なるのは……表情が真剣そのもので、どこか悲壮感すら漂っている。



『……本当に、大丈夫なの?無理はしなくても……』


『いいえ。私も行くわよ。ううん、行かなくてはならないの』


『でも……相手は魔王。強大な力を持つ相手だから、あなたが来てくれるのは心強いけど。でも、魔王はあなたの……』


『お父様は『黒き魂』に蝕まれ、人が変わってしまった。もはや、民を慈しむかつての優しいお父様ではなくなってしまった。そして、その力で世界を恐怖と混乱の渦に陥れようとしている。私は娘として魔王を止めなければならない』


『リシィ……』


『ふふ、リディアは本当にお人好しよね……。私は、大丈夫よ。それに、まだ私は諦めたわけじゃない。お父様がああなってしまったのは黒神教が原因なのは明らか。なら、奴らを打倒してお父様をもとに戻す方法を聞き出す』


『……そっか。分かったよ!もう何も言わないわ。一緒に頑張ろう!!』


『ええ……!』








 ……またしても驚くべき事実が。

 いや、前回の夢でリシィが皇族ということは分かっていたのだから、彼女が300年前のグラナ皇帝……魔王と血縁関係があるのは自明の理ではあるのだけど。


 それでも、彼女自身の口からその事実が明かされると、それはとても驚くべき事実な訳で……



 しかし、いくら異形の者に変じてしまったとは言え、自分の父親と敵対するのは並大抵の覚悟ではないだろう。

 悲しくも誇り高い彼女の瞳には力強い決意の光が宿っているのだった。


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