第十二幕 20 『互角の戦い』
先ずは1−0……我らが1組のリードとなった。
ゴールのあとは試合開始と同じようにコートの中央に審判がボールを投げ入れて再開となる。
「う〜、やられた〜……流石はシフィル。でも!まだこれからだよ!」
悔しがりながらも直ぐに気持ちを切り替えるメリエルちゃん。
そして試合は再開され、先ずはお互いに隙を伺いながら様子見と言ったところか。
暫くは両陣地を行ったり来たりのラリーが続く。
さて、今度は何処で動きがあるのか……
ふと気が付くと、2組チームはマーク君だけが魔法を放っている?
メリエルちゃんは……どうやら大きな魔法を使おうとしているらしく、足を止めて詠唱を行っているようだ。
競技用の杖によって攻撃魔法の威力は著しく制限されてしまうから、大魔法を放つメリットは殆ど無い筈だけど……?
しかし、彼女がリスクを冒してまで使おうとしているのだから、何か考えがあるのだろう。
しかし、その状況を黙ってみているシフィルたちではない。
守りが一人なのであれば…ここがチャンスと見て仕掛ける!!
「一人で守り切れるなんて甘いわよ!![疾風]!!」
「[迅雷]!!」
先制点を入れたときの速攻パターンだ!!
立て続けに放たれた魔法は連続でボールに着弾!
一気に加速させる!!
「[水弾]!!」
さっきと同じようにマーク君がボールを逸らそうとするが、今度は掠りもしないでボールは一直線にゴールに襲いかかり……
「[雷龍]!!」
と、あと少しで2点目が入ると思われた直前にメリエルちゃんの魔法が発動する!!
すると、本来よりもかなり小さな雷の龍が生み出され……素早くゴールとボールの間に割り込んで、パカッと大きく顎を開けてボールを咥えてしまった。
「「あっ!?」」
シフィルたちは呆気にとられる。
その隙に雷龍はボールを咥えたまま猛スピードで1組ゴールに向かう!!
「このっ![旋風]!!」
「[雷矢]!!」
二人の魔法がゴールを阻止するべく雷龍に放たれた!
しかし、雷龍は巧みにスルリと魔法を躱してしまう。
的確な回避動作からさっするに、どうやら自律行動ではなくメリエルちゃんが制御してるようだ。
そして……
ぱすっ……とボールがゴールネットを揺らした!
雷龍はそこでバチバチッと音を立てて放電してから消え去る。
そして……
ピピィーーッ!!
「ゴーーールッ!!」
高らかにゴールが宣言されるのだった。
「いぇーーいっ!やったね!」
「メリエルちゃん!ナイスゴール!!」
「ちょっ!?審判!!あんなの有りなの!?」
シフィルが審判に詰め寄って抗議する。
確かに微妙な感じがするけど、ルール的にはどうなんだろう?
「ルール上は問題ない。ボールの色も黒に変わっていないし、あれで一人一撃の扱いになる」
どうやらルールに抵触はしてないみたい。
メリエルちゃんは問題ない事が分かってたのだろう。
しかし、発動までに時間がかかるから大きなリスクがあるだろうし、早々使える手でもないね。
「くっ……してやられたわね。まぁいいわ。切り替えて行きましょう!」
「ええ!!」
これで試合は1−1。
これまでの流れを見る限り、お互いの力量は殆ど互角だろう。
勝負の行方は全く読めないが……一瞬のミスが命取りの緊張感あふれる試合は観客としては見応えがある。
そして、その後もお互いの力を尽くして激闘が繰り広げられる。
片方がゴールを決めれば、直ぐにもう片方が反撃して追いつく。
そして、スコアはとうとう4−4になった。
お互いのチーム共にマッチポイント。
この競技にはデュースは無いので、先に点を取った方が勝利となる。
そして、最後の決着を付けるためのボールが投げ入れられた……!
さぁ、勝敗の行方は如何に!?
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