第十二幕 19 『熱戦』


 試合開始のホイッスルと共に、ボールが審判によってコートの中央へ投げ入れられた。

 大きさはサッカーボールくらいだろうか。


 このボールは魔法に反発する特殊な素材が使われており、魔法の威力に応じて弾いたときのスピードも増す。

 更に、予め選手たちの魔力パターンを記録させる事で、最後に当てたチームの色(1組は青、2組は赤)に染まり、同じ人が2回連続で当ててしまうと黒くなる(最初は白色で、色に染まっても審判がリセットすると再び白くなる)。

 う〜ん……ハイテクだね!



 まだ空中にあった白いボールに魔法が撃たれる。


「[風矢]!!」


 先ず先に当てたのはシフィルの風魔法だ。

 通常は不可視なのだが、競技用の杖による効果なのか軌跡が緑色の光となって残される。



 パンッ!という小気味よい音をさせて青くなったボールが弾かれ、勢いよく相手陣地に飛んでいく。

 角度的にはゴールに入る軌道ではないが……


「[風矢]!!」


 トール君が即座に魔法を打ち込んでゴールを狙う!


 こちらも緑色の光の尾を引いて真っ直ぐにボールに当たった。

 発動が早く狙いも正確だ。

 シフィルとペアを組むだけあって競技者としてのレベルは中々高いのかもしれないね。



 ボールはゴール目掛け猛スピードで飛んでいく!


 だが…!



「[石弾]!!」


 ボールの前に割り込んだメリエルちゃんが、自分の身体に当たる直前にボールを撃ってゴールを守る!



 なお、基本的に自陣内の移動は自由なのだが、ゴール前の一定範囲だけは立ち入ることができない。

 だから、べったりゴールに張り付いて守ることは出来ないようになってる。



 メリエルちゃんが撃ち返したボールは大きくバウンドしてコート中央付近の上空に舞い上がった。


「トール!守備は任せたわ!」


「了解!」



 シフィルとメリエルちゃんのペア……確かマーク君が上空のボールを狙う!



「[天雷]!!」


 先に魔法を発動したのはマーク君だ。

 本来の威力はかなり抑えられているが、上空からの雷撃はシフィルの風魔法よりも先にボールを捉えた。


 落雷を受けたボールは一直線にゴールに向かう!!



「トール!!」


「[水弾]!!」


 トール君の魔法は辛うじてゴール直前でボールに当たる。

 ゴールから外れたボールはそのままゴールラインを割った。



 ピッ!!



「トール、助かったわ」


「いえ、ギリギリでした」




 ゴールラインを割った場合……サッカーだとコーナキックになるが、この競技では審判員がコーナーからコート中央に向かって投げ入れ、今回は2組チーム優先で当てることができる。

 1組チームが触れないでゴールラインを割った場合は1組優先となっていた。



 審判が準備する間、シフィルがトール君に何事かを耳打ちする。

 ……何か仕掛けるのつもりかな?




 審判員がボールを投げ入れた。

 

 


 そして、コートの中央付近まで来るのを待ってからマーク君が魔法をボールに当て……


「[疾風]!!」


 相手が弾くのと殆ど同時にシフィルの魔法がボールを撃つ!!

 発動から着弾までが恐ろしく早い!!


 更に!


「[迅雷]!!」


 こちらも発動・攻撃速度優先のトール君の魔法がダメ押しの如くボールを撃つ!!


 二連撃で爆発的な加速を得たボールが2組ゴールに襲いかかる!!



「やばっ!?」


「くっ!?[氷弾]!!」



 完全に虚を突かれた格好だが、それでもマーク君がゴールを死守するべく魔法を撃つ!


 氷弾はボールを掠め、僅かにその軌道を逸らす!!



 だが……!!



 バスッ!!



 ボールはゴールポスト間際でゴールに突き刺さった!!!




 ピピィーーッ!!


「ゴーーールッ!!」



 1組の先制ゴールが決まった!



「よし!先ずは一点先取!!ナイスよ、トール!!」


「シフィルさんの作戦勝ちですよ!」



 パァンッ!


 お互いを称えてハイタッチの音が響いた。

 ……トール君が手をふ〜ふ〜してるのはご愛嬌。




 さあ、先ずは一点取ったが、まだまだ勝負の行方は分からない。

 見た感じだとそれほど実力差があるようには思えないし……


 アツい試合はまだ続く!

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