第十二幕 14 『漢』


 フリード対アーキス先輩。

 その攻防は激しさを増す。


 お互いにやり難いタイプだと思うのだが……やはり経験の差なのか、今のところはアーキス先輩の方が優勢である。



「シッ!!」


 果敢にフリードは素早い突きを何度も放つが、スピードにも慣れてきたのか危なげなく回避・防御されてしまう。

 武器は同じでも、ルシェーラよりも防御に重きを置いているようで中々の鉄壁ぶりを見せているアーキス先輩。

 カウンターも鋭く、何度か危ない場面があった。


 これを真正面から崩すのは困難だろう。

 何か策を講じなければ地力の差で押し切られてしまう。



 それはフリードも分かっているとは思うのだが……






「はぁ……はぁ……だぁ〜っ!!堅ぇっ!!」


「……そう簡単に私の防御は貫けないよ。私は近衛志望だから護りには自信がある」




「こら〜!フリード!!ステラに勝利を捧げるんでしょ〜が!!死んでも勝ちなさい!!」


「か、カティア……そんな大声で……!」


「何言ってるの!ほら応援応援!!」


「え!?そ、そうね……フリードくん!!頑張ってぇ〜っ!!」


 ……自分で煽っておいてなんだけど、これで良かったのだろうか?

 ルシェーラも微妙な表情だ。

 まあ、人格矯正プログラムきょういくすれば良いか。


 しかしステラの黄色い声援は、中々に可愛らしい感じで女子力高めだわ。



「うぉ〜っ!!オレはやるぜっ!!」


 うむ。

 またやる気が充填されたようで何より。


 しかし、このままじゃジリ貧だね……

 アイツ、何か考えてれば良いのだけど。











ーーーー フリード ーーーー


 よっしゃあっ!!

 ステラさんの応援でやる気が出たぜ!!


 しかし、他の女子と違ってステラさんは優しいよなぁ……

 もしかして俺に惚れてたりして?

 ま、そんなわけ無いか。



 とにかく!

 やる気が出たのは良いんだが……アーキス先輩の防御の堅さと言ったら……


 武器はルシェーラちゃんと同じで最初こそ対戦経験が活かせたけど。

 明らかに戦闘タイプは異なる。


 どうにかしてあの防御を崩さなければ勝ち目は無え。






 ………仕方ねえ。

 本当はもう少し隠しておきたかったが……負けちまったんじゃ意味がない。


 俺にも切り札ってヤツがあるんだ。

 それを見せてやるぜ……!



ーーーーーーーー







 ……フリードの雰囲気が変わった。


「何か仕掛けるつもりだね」


「勝負に出るわね」


「……」



 呼吸を整え、顔つきも真剣なものになって集中力を高めている様子。

 さて、どんな手を見せてくれるのか?






 姿勢を低くして前屈みになるフリード。

 武器を持った両腕は後ろに伸ばして相手から隠すように構える。

 グッと脚に力を込める。



 ……先輩はその構えを見て次の攻撃を予測してるね。

 フリードもそれは分かっているはず。

 その予想をも超えて一撃を与えるつもりなんだ。



 ……いいねぇ!

 真正面から小細工なしでぶつかるなんて、漢じゃないの!





 そして、フリードが意を決して突撃する!!


「……行くぜ!![雷疾歩ライトニング・ステップ]っ!!!」



 ドンッ!!ドドドンッッ!!!



 疾いっ!!



 いくつもの衝撃音を残しながら、稲妻のようにジグザグな軌道と目にも留まらぬスピードで先輩に迫る!!



「はぁーーーっっ!!!」


 そして、一瞬で先輩の背後に回り込みながら、後ろ手に構えていた二剣を交差するように振るう!!



 アーキス先輩はこのスピードでもしっかり反応してカウンターの一撃を見舞おうとするが……!!



 バリィンッッッ!!!




 ガラスが砕けるような破壊音が鳴り響く!!



 これは……結界が破れた音だ!!

 果たしてどちらの……?

 この位置からだとどちらの攻撃が当たったのか分からなかった。



 二人は交錯したあとお互いに背を向けて立っていた。

 しかし……

 アーキス先輩が地に膝を付いた!!




「そこまでっ!!勝者フリード!!」

 


 わぁーーーっっ!!!



 劇的な逆転勝利に観客は大いに盛り上がり、大歓声を上げるのだった。


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