第十二幕 13 『武術対抗戦〜フリードの初戦』
『さあ、武術対抗戦はどんどん進んで第一回戦第八試合男子、1年1組フリード=ユスティア選手対、3年3組アーキス=ブレッセ選手の試合となります!』
あ、ドロテア先輩と同じクラスなんだ。
しかし、ブレッセ……?
何処かで聞いたことが……
「ねえ、ルシェーラ……アーキス先輩の家名に聞き覚えがあるんだけど?」
「あぁ……マーキスおじさまのお孫さんですわね」
「マーキスおじさまって……ああ、あの人か」
スオージ大森林の事件を解決した時の夜会でお会いしたダンディなオジサマだ。
文官なのに軍隊指揮も出来ちゃう有能な人だよ。
人当たりも良くて、まだ当時は平民と思われていた私にも優しかったのを覚えてる。
……そっか〜、お孫さんなんだ。
「……何かフリードなんかよりそっちを応援したくなる」
「カティア!副級長がそんな事言ってはダメよ!」
「わ!?ご、ごめん、ステラ。冗談だよっ!」
ヤバ……ステラの前でフリードをイジるのは程々にしておこう……
さて、冗談はともかく……改めて武舞台上の二人を見てみると。
フリードはいつものように
方や、アーキス先輩は
これはもしや……
「ねぇ、ルシェーラ。アーキス先輩の武器って……」
「ご想像の通りですわ。以前は私と一緒にお父様に稽古を付けてもらってましたわ。最近も……お父様が王都に来てから度々見てるみたいですわね」
なるほど……ブレーゼン家の同門って事だね。
そうすると、フリードは以前ルシェーラと戦った時の経験が活きるねぇ……その時は負けたけど、今回は雪辱なるか?
「よし。お前ら、準備はいいな?」
「うぃっす!!」
「お願いします」
「うむ。では、1年1組フリード対3年3組アーキス。……始めっ!!」
開始の合図とともに飛び出したのはフリードだ。
本来はマンゴーシュで攻撃を捌いてカウンターを繰り出すのがスタイルだと思うが、重量武器には向かないとの判断だろう。
実際、前回のルシェーラとの戦いでは怒涛の攻めに苦慮していた。
ヤツが攻め手となる場合、スピードとテクニックが持ち味になる。
あとはトリッキーな動きで撹乱かな。
相対するアーキス先輩は対象的にどっしりと腰を落として構え、迎撃の姿勢を見せる。
ふむ……ルシェーラと同門とはいえ、その戦闘スタイルは違うのかな?
あっという間に距離を詰めたフリードがハルバードの間合いに入った瞬間、アーキス先輩はカウンター気味に地を這うような薙ぎ払いの斬撃を振るう!!
ブオンッ!!
速い!!
フリードはその一撃を跳躍して躱す!
しかし……ハルバードの切っ先が地面に突き刺さり、そこを支点にしてアーキス先輩も跳躍しながら蹴りを放つ!!
「なんのぉ!!」
なんと!!
フリードはアーキス先輩の蹴り足を踏み台にして更に高く跳躍した!?
そのままアクロバティックに身を捻りながら二刀を振るうが、その攻撃はギリギリ届かず。
アーキス先輩のカウンターからの蹴り……あれは以前ルシェーラが見せたものだ。
対戦経験が早速役に立ったね!
そして、お互いに立ち位置が入れ替わったが、即座に次の攻防……今度はアーキス先輩が攻勢に回る。
大きく横倒しの八の字…∞を描くようにハルバードを振るいながら間合いを詰めて行き……その流れから斬り上げの一撃を繰り出す!!
フリードはその切っ先を顎先ギリギリでスウェーバックで躱し、即座に懐に飛び込んで……レイピアによる突きが放たれた!!
「シッ!!」
雷光の如き鋭い突きだったが、アーキス先輩は身体を捻って躱す!
少し掠めたが致命打には程遠かった。
再び手元にハルバードを引き寄せた先輩は、突きの直後の僅かな硬直状態を狙って柄を叩きつけるように体ごとぶつかって行く!!
トガァッ!!
「ぐっ!?」
フリードは何とか防御姿勢を取って衝撃を逃がすように自ら跳躍したようだが、完全に衝撃を吸収できなかったようで僅かにうめき声が漏れた。
結界魔法が解けるには至らなかったようだが……軽くダメージは入ったのかもしれない。
そのくらいでは決着にはならず、まだ戦いは続行する。
「さっすがブレーゼン一門だねぇ……強いよ」
「私が知ってる頃よりも相当に腕を上げてますわね…」
「フリードくん……」
ステラが祈るように手を組んで、心配そうな表情で呟く。
ほら、ステラを心配させるんじゃないよ!
しっかり気合い入れて……そして勝ちなさい!!
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