第十二幕 9 『武術対抗戦〜初戦開始前』


 開会式が終っていよいよ対抗戦が始まる。


 本日の競技は男女の武術の第一回戦。

 1学年8クラスあるので、男女それぞれ24人ずつがエントリーしている。

 8人ずつ3ブロックのトーナメント戦を行い、最後は勝ち抜いた3人による総当たり戦で優勝者が決まる。

 第一回戦は男女それぞれ12試合ずつ行われるということになるので結構タイトなスケジュールだね。


 当然、それぞれのクラスの中で武術成績の良い人がでてくることになるだろう。

 ウチのクラスは、女子はルシェーラ、男子がフリードとなる。

 出禁の私やシフィルを除いて最強の布陣だ。



 武術対抗戦の裏で他の競技も行われるのだが……ルシェーラが出場するのでそっちの応援を優先させてもらうとしよう。

 ついでにフリードも。


 まぁ、彼女たちの対戦以外の時間で時間が合えば他の競技の応援に行っても良いかもしれないね。

















 武術対抗戦の会場となる野外演習場にやって来た。


 会場には特設の武舞台が設けられている。

 大きさは武神杯の舞台とほぼ同じくらいだろうか?

 これからここでアツい戦いが繰り広げられる事だろう。

 武神杯では神代遺物アーティファクトの効果によって安全が完璧に確保されていたが、そんなものは早々使えるものではない。

 なので、この大会では選手に対して結界魔法を施すことで安全性を担保している。

 一度だけ物理攻撃を防ぐというものなのだが……かなり強力な防御力を持つ反面、詠唱時間が長いため事前に準備出来るシチュエーション以外では実戦では使いにくい。


 既に多くのギャラリーが詰めかけて、戦いが始まるのを今や遅しと待っている。

 自分のクラスの応援以外にも、純粋に試合を見たいと言うのもあるだろう。

 その辺はイスパルの国民性が如実に現れてるところだ。



 さて、初っ端の第1回戦第1試合からルシェーラの試合である。

 程なく試合開始の時間となるが……彼女は颯爽と武舞台に上がる。

 これだけ注目を浴びる中で、全く臆することもなく堂々としているのは流石だね。

 運動着に、槍戦斧ハルバードと言う、何時もの武術の授業でお馴染みのスタイルである。


 一方、体験相手は3年3組の女生徒。

 トーナメントの組み合わせはくじ引きによりランダムに決まっている。

 

 こちらも上級生の余裕なのか落ち着いた感じである。

 流石に3年生のクラス代表を務めるだけあって、腕に自信があるのだろう。

 武器は……自身の身の丈を優に超える両手剣クレイモアだ。


 二人とも華奢な身体に重量武器を携えていて、絵面としてギャップが激しいね……



「うわ〜……初戦から凄い戦いになりそうなカンジ……」


 二人の武器の迫力から、レティがそんな呟きを漏らす。


「どうかな?実力的にはルシェーラの方が上のように見えるのだけど……」


「そうね……でも、あの先輩も結構やりそうな雰囲気だよ?」


 私の見立てにシフィルが同調しつつも、決して油断できない相手であると感じたようだ。

 それは私も同意見だ。



「あの人は3年3組のドロテア先輩ね。何でも昨年のクラス対抗戦では準優勝だったらしいわ」


 私達の話を聞いていたステラがそんな情報を教えてくれた。


「昨年の準優勝者!!初戦からそんな人に当たるなんて……ルシェーラはクジ運が良いね!」


「本当ね!」


「え……?そ、そこは逆なんじゃ………いえ、カティアとシフィルだものね……」


 強敵と戦う機会は多いほうが経験になるんだよ!










ーーーー ルシェーラ ーーーー


 武舞台に上がった私の前には対戦相手となる3年生の女生徒。

 確かお名前はドロテア先輩だったかと。


 事前の情報によれば、昨年の準優勝者とのこと。

 初戦からそのような方と戦えるなんて……私はクジ運が良いみたいですわ。



「よろしくお願いしますわ、先輩」


「ええ、こちらこそ。(……どうやら1年生と言えども手加減の必要は無さそう……いえ、それどころか、むしろ私の方が……)」


 ……どうやら、私のことを1年生と侮るような雰囲気はありませんわね。

 かなりの実力者とお見受けしました。



 ふふ……これは楽しみですわ。

 強敵との戦いは望むところです。


 でも、勝つのは私。

 対抗戦最初の勝ち名乗りを挙げさせていただきます!

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