第十一幕 66 『迷宮管理者は語る』
ついに王都ダンジョンの最深部に到達した私達は、そこで
驚くべき事に彼は、前世の【俺】……あるいは賢者リュートと同じ姿をしていたが、それは借り物だと言う。
その正体はこのダンジョンの中枢とも言うべき存在、ダンジョン・コアであった。
人格を持ち意思疎通が出来るダンジョン・コアが存在するなどと聞いた事は無いが……
「数千年の時を超えて存在し続けた私は、ダンジョンに潜る様々な人間たちの意識を読み取る事で学習し、人格を得るに至りました」
と言う事らしい。
と言う事は、古くから知られたダンジョンのコアは同じように人格を持っているのかもしれない。
王都ダンジョンと同じくらいの歴史と規模を持つダンジョンはやはり未踏でコアは発見されてないだろうから、可能性は高いと思う。
ともかく、賢者リュートが導いた先……ここが目的地であるのは間違いない。
彼が伝えたかったこと……それは今目の前にいる
「あなたは……あ、そう言えばお名前は……?」
「元来、私には名などありませんでしたし、それで困ることも無かったのですが……不便だと言ってリュートが名付けてくれました。どうか私の事は『ダン吉』とお呼びください」
りゅ〜とぉ〜っっ!!?
お前、本当に【俺】なのかっ!?
フザケ過ぎだろっ!!?
「『ダンキチ』……変わった響きですわね?」
「確かに。東方系の響きにも聞こえますね」
くっ……私しかツッコめる人間がいねぇっ!!
……まぁ、いい。
とにかく今は話を聞かねば。
「そ、それで……ダンキチさんは、賢者リュートに会ったということですが、どう言う話をされたのですか?」
「彼はこの世界の行く末を憂いていました。かつてない災厄が未来に訪れる事を予見していたのです。彼はこの世界と異る世界よりやって来た『異邦人』で……私には理解しかねる事だったのですが、彼はこの世界に来る前に、この世界の未来を垣間見たと言うのです」
「それは賢者の書にも書いてありました。『魔王』や『邪神』と呼ばれるような存在が現れ、世界を混乱に陥れる、と」
「然り。かの者たちは異界より現れる。そして賢者は、異界……異質なものとしてダンジョンの存在にヒントを求めた」
そうだ。
そこまでは書に書いてある。
「ええ。そう考えたリュートはダンジョンに潜って……ここに到達してあなたに出会った。そして、ダンジョンの存在意義が異界の扉を封じるものだと言う事を知った。……書に書かれていたのはここまで。あとはその目で確かめよと……私達は賢者が遺した足跡を辿ってここまで来たのです」
「そうでしょうね。彼はここで私と話したあと、様々な仕掛けをダンジョンに施しました。世界の危機に立ち向かうだけの志と力を持ったもののみが、ここに来れるように…と。私もそれに協力しています」
第5階層の隠し部屋に始まり、案内の
なるほど……到底人間の力では成し得ない仕掛けの数々も、このダンジョンの中枢たるコアが力を貸せば……と言う事か。
「ミロンはリュートに造られたと言っていたけど、もしかして……」
なお、彼女は再びミーティアの頭上に陣取っている。
もうすっかりその絵面に慣れてしまった。
「器をリュートが造り、私の魂の一部を分け与えて命を吹き込みました。その娘は言わば、私の分身のようなものです」
「はい。リュート様とダンキチ様が父親であり母親ですね!」
……果たして残念な性格はどちらのものを引き継いだのやら?
「……それで、ダンジョンが異界の扉を封じる、と言うのは?そもそもダンジョンとは一体何なのでしょうか?」
私は核心となる質問をする。
この世界でも異質な存在……それはここに至るまでに十分に認識することができた。
果たしてダンジョンの秘密とは……?
ついに、その秘密が明らかになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます