第十一幕 61 『天空の覇者』


「こ、これ……いきなり消えたりしませんよね?」


 恐る恐るリーゼさんが口にする。

 極力下を見ないようにしているが、気が気でない様子。

 あ〜、高いところ苦手なんだっけ……


 確かに、床が透明だからちょっと怖いけど。




 そんなリーゼさんの心配も杞憂に終わり、塔の最上部へと到達したようだ。


 動きを止めた床は、透明だったものが普通の床に変わった。

 ……どーゆう仕組みなんだろ?


 リーゼさんがソワソワしてるけど、スルーだよ!







 出口らしき扉があるのでそちらの方に向かう。

 そこから上方に向かって長い階段が延び、その先に外のものらしき光が見えた。



 そして、その階段を登ると再び外に出た。

 おそらく、下から見上げたときに見えた浮遊島の上部だろう。


 色とりどりの草花に覆われた平坦な草原になっているのは下の大地と同じ。

 ほぼ円形で、戦闘を行うのに十分な広さがあるけど……気をつけないと下に真っ逆さまだ。






「さて……ここがボス戦の舞台だと思うのだけど」


「……特に敵の姿は見当たりませんわね」


「警戒は怠らないようにな」



 …と、そこで突然、ミーティアの頭の上に陣取っていたミロンが、パタパタと羽ばたいて私達から離れていく。



「ミロン……?」




 数メートル先の上空に静止したミロンは、戸惑う私達に向き直って言う。

 その声は、今までのどこかのんびりした口調と異なり、威厳すら感じさせるものだった。


「よくここまで辿り着きました。これまで側でずっと見てきましたが……その力、その知恵、その意思。まさに英傑と呼ぶに相応しいものでした。この階層の守護者……私、ミロンが全力を以てお相手いたしましょう」



 彼女がそう言うと、突然凄まじいプレッシャーが放たれた!!


 そして、小さな妖精の身体が光に包まれると、みるみるうちに大きくなっていき……

 光が晴れたとき、そこに巨大な黄金の竜が現れた!



『さぁ、遠慮はいりません。……とは言っても、あなた達は優しいから、今まで一緒にいた相手に刃を向けるのは難しいかもしれませんね。だから先に伝えておきましょう。私の存在はこのダンジョンによって維持されてます。だからダンジョンが存在する限り不滅ですから……全力で向かってきなさい!!』




 そう言うと黄金竜ミロンの身体は光を放ちはじめ、それは一箇所に集まっていく……ブレスだ!!


 開幕ブレスはもはやお約束だ!!




「回避!!」


 私が警告するまでもなく、皆即座に回避行動をとっている。

 流石だね。





 そしてミロンのブレスが放たれた!!



 音もなく襲いかかる光の奔流が、私達がほんの一瞬前まで立っていた場所を薙ぎ払った!!



 ジュオッ!!



 超高温によって地面が蒸発する音がした。




 うん、ヤバいね!!



 ドラゴンのブレスなんて、まともに受けたらおしまいなのは一緒だけど……あんな光景を見せつけられると戦慄が走る。



 次はこちらが反撃したいところだが、相手は空を自由に飛び回る事ができる。

 何とか翼を封じて地面に引きずり降ろしたいところだ。










 と、思うのだが……



 ジュッ!!


「うわっ!?」



 ピチュンッ!!


「ひえっ!!」



 シュンッ!!


「あぶなっ!?掠ったよ!!」



 初撃の光のブレスを躱した後も、レーザー光による攻撃が雨霰と降り注いでくる!

 まるで弾幕シューティングのボスみたいだよ!!



「ちょっ!!一方的すぎる!?」


「ミロン!!加減してよ!!」


『何を甘いことを言ってるのです!!これまで試練を突破してきたのですから、これくらい何とかしてみなさい!!』



 ひえ〜!!スパルタだよ!!

 何かちょっと楽しそうな声音だしっ!!


 後で覚えてなさいよ!!!



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