第十一幕 59 『第79階層』

 自分自身との戦いに決着をつけ、ミーティアが目覚めるまで休憩を取ったあと……私達はボス部屋の奥に現れた扉を開けて先に進む。

 すると、これまでと同じように光の渦があったので、それに飛び込んだ。



















 そしてまた景色が一転した。

 今度は再び屋外になるようだ。



 色とりどりの花が咲き乱れる見渡す限りの草原。

 小鳥が囀り蝶が舞う。

 空は雲ひとつなく青く澄み渡り、どこまでも高い。


 それはさながら『楽園エデン』のようであった。








「カティア!ミーティア!」


「カイト!」


「パパ!」


 すぐ近くにはカイトが居たらしく、私達が転移してくると直ぐに声をかけてくれた。



「カティアさん、ミーティアちゃん、良かったですわ」


「ふぅ…護衛としては気が気でなかったですよ」


 そして、ルシェーラとケイトリンも一緒だった。







「ロウエンさんとリーゼさんは?」


「まだ来ていないな。俺が最初で、すぐにルシェーラ、それから暫くしてケイトリンが合流した。」


 さくっ、と試練を突破……カイトは流石だね!

 ルシェーラもあっさり突破したみたいだし、成長著しい。



 ケイトリンは……って!


「ケイトリン!怪我してるじゃない!!」


 左の肩口を布で縛ってるけど、血が滲んでるよ!


「あ〜、大丈夫ですよ。手当はしてますし……」


「治癒魔法かけるよ。ちょっと見せて!」


 そう言って布を取ると、ざっくりとした切傷が……止血はしてるようだけど、縫ってるわけではないからこれでは不十分だろう。


「全然大丈夫じゃ無いでしょう……無理してはダメだよ。はい、[快癒]っと」


 私が治癒魔法を使うと、傷は直ぐに塞がって跡も残らず完治した。



「ありがとうございます。…いや〜、ドジったわけじゃなくて、突破するために必要だったんですよ」


「……肉を切らせて骨を断つ?」


「ですです」


 もう……無茶して……

 でも、そうでもしなければ突破できなかったんだよね。



「カイトとルシェーラは怪我してない?」


 見た目は大丈夫そうだけど、骨折とか打撲だと分からないからね。


「俺は大丈夫だ」


「私も平気ですわ」


「……うう、やっぱり私だけ味噌っかす」


「そんな事言わないの。こういうのはタイプにもよるだろうし」


 自分自身を乗り越える……そんな試練を突破できるだけでも凄いことだと思うよ。







「ミーティアはママと一緒だったのか?」


「うん!」


「何かイレギュラーが生じたみたい。ほら、私達って色々複雑じゃない?」


「そうか……何れにせよ二人一緒なら良かった。心配したからな」


「コピーを倒してから休憩してたから少し時間がかかったんだけど……ロウエンさんとリーゼさんもそうなのかな?」


「そうかも知れないな」


 心配だけど、信じて待つしかないね……











 そうして暫く待っていると、ほぼ同時に二人が転移してきた。



「お?もう皆揃ってるッスか」


「すみません、お待たせしてしまったようで……」



 リーゼさんは見た感じ怪我はしてなさそうだけど……


「ロウエンさん、血だらけじゃない!!」


 あちこち切り傷があって服も血に染まっている。

 大きな傷はないみたいだけど、見た目はかなり酷いよ。



「ッス。治癒魔法プリーズっす」


「はいはい、[快癒]!……治ったかな?」


「バッチリっす!」


「それにしても……随分激しい戦いだったみたいだね?」


「かつて己の中に封印した、忌まわしき力同士の闘いだったッス!」


 ……何だ、ただの中二病か。



「血は自分で拭いてね。あと着替えたほうが良いと思うよ」


「あ、手伝います……」


 と、リーゼさんが甲斐甲斐しく世話を始めた。


 私とルシェーラはもちろんニヨニヨする!



「そう言えば……リーゼは怪我はしてないみたいだが、随分時間がかかったな?……お前、まさか?」


 カイトのその問に、そっと目を逸らすリーゼさん。


 あ〜、なるほど……確かにあの魔法陣は、リーゼさん的には放っておけないだろうね。



「すみません、ほんの少し興味が湧いてしまい……コピーの『私』と一緒に色々考察や議論してたら思いの外時間が……」


「「……」」


 コピーも一緒にって……そんなところまで再現しなくても。



「で、ですが!そのおかげでコピーの撃破自体は一瞬で終わりました!」


「え…?一体どうやって……」


 みんなそれぞれコピーの撃破には苦労したはず。

 一瞬で撃破するなど、一体どうすればそんなことが可能なのか?


 それで、聞いたところによると……





「そんなのアリ……?」


「流石といえば流石だな」


 まぁ、リーゼさんらしいといえばそうかも知れないけど。



「とにかく、こうしてみんな無事に突破してこれたのは良かったよ。一時はどうなることか、とも思ったし」


「ですわね。皆さんのことは信頼してましたけど、心配は心配でしたからね」


 本当にね。








 さあ、これで皆揃った事だし……あと残り2階層。

 頑張っていこう!!



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