第十一幕 44 『水中回廊』


「……せやぁっ!!」


 タイミングを合わせて気合一閃!


 ギリギリまで引き付けてから、紙一重で回避しつつ繰り出したカイトの一撃によってランサーフィッシュは上下に分断された。


 そして突撃の勢いのまま地面に堕ちる…寸前で光となって消えた。




「[雷鎖網]!!」


 バチィッ!!

 バチバチッ!!


 後続二体の攻撃を、私が発動させた雷撃の網が絡め取って、これも撃退。



 だが、まだまだランサーフィッシュは続々と向かってくる……!


 まるでミサイル……いや、この場合は文字通り魚雷か。





 最初の遭遇時……一体だけ襲いかかって来た時は、あっさり回避したのだけど。


 その後、途中で転進したのか再び背後から襲ってきたので、今度はタイミングを合わせて先程のカイトのようにカウンターで撃破した。


 それは良かったのだが……



 その後も同じようにランサーフィッシュが襲いかかってきて……次第にその数と周期が増えてきてるのだ。

 今はまだ対処出来ているが…


 この調子でいくと、そのうち弾幕とも言えるほどの攻撃が押し寄せるかもしれない。


 ルートが一本道なのがまだ幸いだったかも。




「段々と息をつく暇も無くなってきたね……」


「先の階層と同じ様に、物量で攻めて来られるとキツい……っと、もう来たッス」


「次は4体か……討ち漏らすと背後から挟み撃ちにされるぞ!左の奴は俺が仕留める!」


「右の一体は任せて下さいまし!」


「じゃあ真ん中2体は私が!他のみんなは討ち漏らしをフォロー!」


「は〜い!」


「分かったッス!」


「了解です」


「任せて下さい!」



 段々キツくなってくるらね…接敵したヤツは確実に仕留めないと。






 












 何度目かの襲撃を乗り切り、ひたすら通路を進んでいく。

 これまで、代わり映えのしない景色が延々と続いていたが、通路の先に光が見えてきた。


 いよいよ通路の終わりが近付いてるのだろうか……?




 そして……その先に見た光景に、私達はまたもや度肝を抜かれる。



「これは……水のトンネル…?」


「上から光が…もう日が出てるってこと?」



 石造りの通路を出ると、景色は完全に一変した。

 目の前に広がったのは海底の世界。

 その中に通り道が出来、まさに水中回廊であった。


 前世の水族館にある様なそれを連想したが、壁に触れてみるとそれは海水そのものだった。

 そして、上方からは陽光らしき光が降り注ぎ、水の揺らめきが影になって床に映し出されている。


 幻想的な光景に、一時心を奪われる。




 だが、それに魅入っている余裕は無かった。



「カティアちゃん!敵が来るッス!!」


 ロウエンさんの警告を受けるまでもなく、四方八方の海から魔物が押し寄せてくるのが分かった。


 これまで相手をしてきたランサーフィッシュの他にも、多種多様な水棲の魔物が確認できる。



「どうやら…これまではただの準備運動に過ぎなかったわけですわね」


「みたいだね……向こうは海中を自由に動けるけど、こっちは限られた通路しか使えない。なかなかハードだね」


「いちいち相手してたらキリがありません。一気に駆け抜けたほうが良くないですか?」


 ケイトリンの言う通り、多勢に無勢かも知れない。

 地の利はあちらにあるし……



「どこまでコレが続くのか分からないけど……そうした方が良さそうだね。みんな、走れる?」


 私の問にみんな頷く。


 よし、一気に行こうか!




 そして、私達は水中回廊に飛び出した。



 左右上の水中から敵が襲いかかってくるのを走りながら迎撃しつつ、スピードを緩めずに駆け抜ける。


 怒涛の攻撃に水飛沫が上がり、私達はすっかり濡れねずみになるが、構わずに突き進む!



 海底の地形は比較的なだらかだが、起伏が全く無い訳ではない。

 そのため、これまでの通路とは異なり、足場にも気を付けながら走らなければならない。

 だが、みんなフィールドワークは慣れたものなので、誰一人遅れることもなく走り続けている。


 と言うか……このメンツの中では唯一、完全な後衛職であるはずのリーゼさんも中々の走りっぷりだ。

 そして走りながらも詠唱しながら魔法で敵を迎撃してる。

 かつての『鳶』は、逃げ足には自信があるってカイトが言ってたけど……彼女もその一員だったね。



 カイト、ルシェーラ、そしてリヴェラを薙刀に変えた私が武器を振るって露払いしながら先頭を駆ける。

 すぐ後ろに続くロウエンさんは私達が進む先の状況把握に専念。

 リーゼさんとミーティアが魔法で迎撃、殿のケイトリンはパーティー全体の状況把握とフォロー、後方からの攻撃に注意を払う。



 そんなフォーメーションを維持しながら、私達は海底を駆けていくのであった。


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