第十一幕 13 『鑑定の結果』

 さて、休み明け初日の授業も全て終わり、放課後となった。

 朝にルシェーラと約束した通り、これからギルドに向かうことになる。


 彼女だけでなく、シフィルやステラ、メリエルちゃん…それに、フリード、ユーグ、ガエル君もだ。

 件の本がドロップした時にいたメンバーだね。

 ギルドでレイラさんとも待ち合わせしてるらしいので、久しぶりの再会が楽しみである。



 そして…


「私も行くよ。仲間外れは嫌よ〜」


「それは良いけど…商会は大丈夫なの?忙しいんでしょ?」


 式典に向けての準備が忙しいってボヤいてたけど?


「リディーに任せた!」


 そっすか。

 リディーさんも大変だね…惚れた弱みってやつかも。



「じゃあ行きましょう」























「カティアちゃん!!」


「レイラさん!お久し振りです!」


 ギルドの中に入ると、直ぐにレイラさんが話しかけてきてくれた。

 

 久しぶりの再会に喜び合い、笑顔でハグする。



「元気そうで良かったわ」


「レイラさんこそ、お変わりなく。あ、レダさんは…」


 怪我をして療養中と聞いたけど、まだ復帰出来ないのかな?


「ああ、レダはもう復帰して…リハビリがてら簡単な依頼を受けたりしてるわ」


「そうですか、良かったです!」


 それを聞いて安心した。


 怪我なら治癒魔法で治せるが…そうそう使い手は居ないので、普通は魔法に頼らない医師に診せる事になる。

 神殿に行けば治療してもらえるが、そちらは困窮者優先となるため、普通の人が治療をお願いするにはそこそこの寄附金が必要になる。

 まぁ、緊急を要する場合はこの限りではなかったりすることも。

 あと…任意にはなるけど、ギルドで扱ってる保険に加入しておけば、万が一の怪我で長期間依頼が受けられなかった場合などの補償が受けられる。



 さて、これで全員揃ったので早速受付に…代表してルシェーラとステラが行くことに。

 あ、レティとレイラさんは初対面だったのでお互い紹介した。


 そして受付に話を通すと、別室へと案内されることになった。
















「それで、あの本の鑑定結界なのだが…」


 そう話を始めたのは、王都ギルドの長であるアイザックさんだ。

 彼が出てきたということは…やはり特殊ケースと言うことなのだろう。



「結論から言えば、ギルドの鑑定員や資料などでは分からなかった」


「「ええ!?」」


「……と言う事は、これまで全く知られていないドロップアイテム、と言う事ですか?」


 ギルド長の言葉に学園生メンバーは驚きをあらわにするが…レイラさんは予想していたらしく、冷静に確認する。

 私もそれは予想の範囲内だったので驚きは無い。


「そうなるな。しかし、分かりませんでした…で終わりにするのはギルドの沽券にも関わるのでな。アスティカントに調査依頼をだしたのだ」


 何でも数ページだけそっくり書き写して、早鳥で送って協力を仰いだらしい。

 うん、流石にギルドは優秀で仕事が速いね。

 そして、口ぶりから言って…もうその結果は返ってきてるのだろう。



「その結果は…?」


「アスティカントでも詳しいことは分からないとの事だ」


「「ええ〜……」」


 もったいぶった割には…の回答だったので、あからさまにガッカリする面々。

 だけど話にはまだ続きがあった。


「だが…」


 そこでギルド長は私の方を見て言う。


「カティア様にお見せすれば、分かるだろう……との事でした。どうやらカティア様も予想はしていらっしゃったご様子で」


「……ええ。誰も見たことのない文字、と聞きまして…もしかしたら、とは思ってました」


 アスティカントの賢者の塔で発見した隠し部屋。

 そこで当の賢者リュートより委ねられた『異界黙示録』なる本……もう少しマシなタイトルは付けられなかったのか。


 と、ともかく…


 その本は恐らく、前世の【俺】の母国語である日本語で書かれているのだと思う。

 私に見せれば分かる…多分、グレイル様がそう判断したのだろうから間違いないと思う。

 レーヴェラントから帰国する際にアスティカントへ寄った時に『異界黙示録』は返却してるから、送った写しと比較すれば直ぐに同じ言語の文字だと分かるだろうし。



(ねぇ、カティア…もしかして?)


 レティが耳打ちして聞いてきた。


(うん。多分そうだと思う)


(…後で説明ね!)


(分かった。…私も分からない事の方が多いんだけど)


 まあ気になるよね。

 前世が私と同じ日本人の彼女としては。





「では…その本を見せて頂けますか?」


「はい。今は金庫に厳重に保管してますので、少々お待ちください」


 そう言って、控えていた秘書っぽい人に指示を出して実物を持ってきてもらうことになった。




 果たして……


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