第十一幕 1 『神々の宴』
エメリール神殿総本山の礼拝堂は多くの人で埋め尽くされていた。
普段から多くの参拝者を受け入れるだけの十分な広さを持つが、流石に今日は王都や近隣中から人が集まるので中々捌ききれるものではない。
スムーズに参拝が出来るように聖職者たちが誘導しているが、それでも進むのにはかなりの時間がかかるだろう。
…と、私達に気が付いた神殿の聖職者が話を通したらしく、ティセラさんがこちらにやってきた。
「カティア様、テオフィルス様、ようこそおいでくださいました。新年のお慶びを申し上げます」
「ティセラさん、昨年中は大変お世話になりました」
「今年もよろしくお願いします」
「「おめでとうございます!」」
お互いに新年の挨拶を交わす。
「ところで、このままですとかなりの時間がかかると思うので、どうかこちらへ…」
どうやら気を使ってくれてるみたいなのだが…
「お気遣いありがとうございます。ですが…こうして王都民の皆さんと同じ様にお参りしたいのです。所信表明で民と同じ目線で…と申しましたし」
「そうでしたか…流石はカティア様、ご立派なお考えです。差し出がましい真似をして申し訳ありませんでした」
「いえいえ!とんでもない!こちらこそ折角のお気遣いを断ってしまって申し訳ありません」
この場が混乱するようなら申し出を受けたほうが良いと思うけど…幸いにも良識ある王都民は特に騒ぎ立てることもなく比較的落ち着いてるので、出来ればこのまま参拝したかった。
そうしてそのまま人の波に乗って進むこと暫し。
私達はようやく神像の前までやって来ることができた。
いつものように跪いて両手を組み祈りを捧げる。
(リル姉さん、新年あけましておめでとうございます。去年は本当にお世話になりました)
心のなかで新年の挨拶をする。
そして……いつものあの感覚。
私の意識は神界へと引き上げられた。
そこは一面の草原。
柔らかな陽射しが気持ちいい。
爽やかな風が吹き抜けて、草花の匂いを運んでくる。
現実世界では寒さ厳しい冬だと言うのに、神界はいつも穏やかな気候だね。
……と言うか、ここはどこだろう?
いつものリル姉さんのところでは無いみたいだけど。
「ここは……」
あ、テオも今回は呼ばれたんだね。
「ママ〜、ここどこ?」
これもいつも通り、私と一緒に神界に来たミーティアが聞いてくるが…
「う〜ん…いつもと違う場所だよねぇ?リル姉さんはどこだろう?」
二人してキョロキョロと周りを見回していると、遠くから声が聞こえてきた。
……おーい……こっちだよ〜……
声のする方向を振り返ると、少し離れた小高い丘の上で、誰かが手を降っているのが見えた。
「あれは……リナ姉さんかな。行ってみよう」
「ああ」
「うん!」
そうして、私達は丘を登ってリナ姉さんの元へと向かう。
「やほ〜、カティアちゃん!元気にしてたかな?」
「リナ姉さん久しぶり!私達は元気だよ」
「お久しぶりです、エメリナ様」
「お姉ちゃん、こんにちは〜!」
リナ姉さんと挨拶を交わす。
久しぶりに会ったけど、今日も元気いっぱいだね。
「リル姉さんの神殿にお参りしたんだけど…ここはどこなの?と言うかリル姉さんは?」
いつもと違う場所に出た上に、当のリル姉さんが見当たらないことについて聞いてみる。
「お姉ちゃんは今忙しくて手が離せないから、私が迎えに来たのよ」
「忙しい?何か問題でもあったの?」
「ううん、問題じゃないわよ。今日はね……いや、行ってみれば分かるわ」
「?」
「さ、こっちだよ〜。ほらほら、行きましょ」
「わっ!?ちょ、ちょっと、引っ張らないで…」
私の手を取って歩き出すリナ姉さん。
…いったい何があるんだろうか?
そして、リナ姉さんに案内されてやってきたのは、先程リナ姉さんに会った場所から更に丘を登ったその頂上。
そこで目にしたのは、予想もしてなかった光景だった。
「お〜い!カティアちゃん達を連れてきたよ〜!」
「リナ、ご苦労だったな。久し振りだな、カティア」
「うむ、来たかカティアよ」
「おう!久し振りじゃねぇか!元気だったか?」
「私はこの間会ったばかりだけどね〜」
「ほぅ、この娘がエメリールの……」
私達を迎えたのは、リリア姉さんにディザール様やオキュパロス様、リヴェティアラ様……そして私の知らない人(?)たち。
丘の上の草原に、レジャーシートのように絨毯を敷いて、その上で寛ぎながら思い思いに談笑していた様子。
様々な料理や飲み物が用意されており……要するに、宴会が行われていたようだ。
ここは神界だ。
つまり、この方々は……
「もしかして、12神の皆様……でいらっしゃいますか?」
「そうだよ〜。今日は年に一度みんなで集まる日なのよ」
まさかの神々の宴会の場に呼ばれたということのようだった。
あ!?
早速ミーティアがお菓子で餌付けされてる!?
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