第十幕 40 『方針』
ゼアルさんの事についてハンネス様に説明した。
地脈の守護者たる彼が、何故ミーティアに憑いているのか…その経緯を。
「何と…そのような方が力を貸してくれる、と?」
『無論、本体ほどの力は出せねえんだがな。それでも初撃の広域殲滅魔法と合わせりゃ多少は削れるだろ』
「それは有り難いんですけど……ミーティアを戦場に連れて行くなんて…」
いくら力があるといっても、幼い彼女を血なまぐさい戦場に連れてくことなど、母親としては了承し難い。
『一撃見舞うのが精々だろうし、それが終わったら直ぐに後方に引っ込むさ』
「ママ!私もパパの国を守るの!」
むむむ……
本人の意思は固いようだけど…
どうしようかと悩んでいると、更に新たな声が上がった。
「それなら、ミーティアちゃんには私が付いていてあげるよ」
今度はフェレーネお義母さまが会議室に入ってきた。
……割と出入りが自由なんだけど、セキュリティ大丈夫なの?
いや、そんなことより…
「何を言ってるんですか!まだ出産も終わったばかりだというのに、無茶ですよ!」
「そうよ、フェレーネ。いくらあなたでも流石にまだ無理でしょう?」
ラシェル様も私に同調して、お義母さまを嗜める。
「もう大分回復したから大丈夫……って言っても止められるだろうけど。でも、前線には出ないし、カティアちゃんが[絶唱]とやらを使ってる間の護衛とか…ミーティアちゃんも一緒に居れば、アンタも安心できるでしょ?……どのみち、ここで食い止めなければ王都が危機に晒されるんだから」
むむむ……こっちも意思が固そうだよ。
でも…そうだね。
確かに、王都に居れば安全とは言い切れない。
確実に魔軍を食い止めなければならないし、助力は正直なところ有り難いのもそうだ。
「…分かりました。ミーティアのこと、お願いします。…って、私だけじゃなく、他の皆さん許可も…」
「フェレーネに関しては止めても無駄だろう。カティア姫さえ構わぬのなら、私も許可しよう」
「そうねぇ…言い出したら聞かないものね」
ハンネス様、ラシェル様もそう言う。
他の皆も同意見みたいだ。
「テオは?」
「母さんに関してはその通りだな。ミーティアについては正直俺も乗り気ではないが……今回は俺もカティアの護衛にまわるつもりだから、一緒に護る」
「パパが護ってくれるの!」
「私の護衛?テオが?」
私としてはその方が安心出来るけど…彼の性格からすれば不自然な気がした。
「俺の
「それは…もしかして、リヴェティアラ様の…?」
「ああ。
やっぱり…比較的安全な後方で支援すると言うのが心苦しいみたいだね。
でも、テオも言った通り[絶唱]の効果が向上するなら、そっちの方が戦略的には有用だと思う。
「うむ。その判断は正しいな。是非そうしてくれ」
ハンネス様もそう判断したようだ。
「はい。どれくらいの効果が見込めるのかは未知数なところもありますが…大きな力になることは間違いないでしょう。……ですが、一つ懸念があります」
「懸念?」
「はい。
そしてテオは、かつて自身が戦った相手について説明する。
私も話は聞いていたけど…改めて聞くと、とんでもない相手だったという事を再認識する。
「今回はあの時よりも
……確かに。
危険度は前回の比ではないだろう。
そうすると、作戦としてはどうするべきか?
「……つまり。先ずは
アルノルト様がそうまとめる。
要するに、正攻法って事だね。
「はい。そして指揮官を叩く精鋭部隊は、前回の戦闘経験のある私やダードさん、ティダさん……カティアが適任になるかと」
「おや?いいのかい、愛しの姫を危険にさらして?」
愛しの姫……えへ。
まあ、テオが私の力を必要とする理由は分かる。
おそらく、前回のその強力な魔物というのは…
「もちろん進んで危険に晒したいなどとは思いませんが。しかし……前回のオーガエンペラー…と呼ぶには余りにも異質な存在でしたが…おそらく魔族絡みだったと思われます。そうすると、カティアの魔族特攻とも言える力は必要になるかもしれない」
「ううむ……そうすると、カティア姫に頼りきりになってしまうな…」
「ハンネス様、そんな事はありません。いくら私の[絶唱]や
それこそ[絶唱]はあくまでも支援スキルなんだし、
「ふ…確かにその通りだ。カーシャ殿、イスパルは素晴らしい後継者に恵まれたようだな」
「ええ、本当に。もはや私の出る幕はないのかもしれませんね」
「そ、そんな事は!」
「ふふふ、分かってますよ。私も私のできることをしっかりやり遂げます。あなたがそうするように」
「…はいっ!」
「よし。では精鋭部隊には私も加わろう」
「ええ!?ハンネス様がですか!?」
王様だよ!?
「あら、駄目よあなた。精鋭部隊には私が加わりますわ」
王妃様まで!?
「何だい何だい二人とも。それなら私の方が適任でしょ」
お義母さまもノッてきた!?
そんなカオスな状況の中、不意にやんわりとした緊張感の無い声がかかった。
「…いや〜、流石に父様、母様たちは不味いでしょ。その役目は僕かな、なんて思ったり…」
…
……
………
「「「え!?居たの!!??」」」
アルフォンス様…
安定の存在感の無さであった。
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