第九幕 35 『野外実習〜キャンプ2』
「は〜い、みんな〜!料理が出来たよ〜!」
「うお〜!待ってました!」
「…いい匂いだ」
「野外なのに随分豪勢になりましたね…」
「えへへ〜、そうでしょそうでしょ。ちょっと食材は山菜に偏ってるし、調味料も限られてるから苦労したけど…頑張ったよ!」
一応メインに魚があるとは言え、バリエーションには苦心した。
でも、かなりの自信作だよ。
「カティアさんの手料理…うう、俺っちのクジ運の強さに感謝だぜ!」
「…他の班の男どもが怨めしそうに見ているな」
…何か男子ばっかりウチのテントの周りに集まってきてるね。
「あ〜、出来ればお裾分けしたいトコだけど…そこまで量がある訳じゃないから。ゴメンね〜」
と私が言うと、ガックリと項垂れて散って行った。
…そんなに食べたかったのか〜。
「トドメを刺されましたね」
「何という優越感!」
「はいはい、馬鹿なこと言ってないで冷めないうちに食べましょ。大体、私だけじゃなくて、女子皆で頑張って作ったんだからね!」
フリードはその辺しっかり教育しておかなければ。
「う、美味ぇっ!!」
「…あんな地味な山菜と、精々塩胡椒くらいしかなかったはずなのに」
「…美味い」
良かった、中々好評のようだ。
美味しく食べてもらえるなら、皆で頑張った甲斐があるよ。
「この魚…脂がのってて凄く美味しいです。ユーグ君、クリフ君、ありがとう」
ステラの言うとおり、魚の有り無しは大きな差だからね。
二人には感謝しないと。
塩振って焼いただけだが、何せ素材が新鮮だからそれだけでも凄く美味しい。
旬の素材を新鮮なまま頂くというのが一番の贅沢なのかもね。
そうして、暫くは会話もそこそこに皆で食事を進めるのだった。
「ふぅ…もうお腹いっぱいだよ!」
「美味しかったわ」
「いや〜、デザートまであるとはなぁ…この班で良かった〜」
少し多いかな?と思っていた料理の数々はあっという間に全て完食となった。
流石、みんな食べざかりだね。
気持ちの良い食べっぷりで、作った者としては嬉しいよ。
「お粗末様でした。じゃあ、後片付けを…」
「ああ、女子は休んでくれて良いぜ。料理は女子がやったんだから、せめて後片付けくらいは俺らがするよ」
「そお?じゃあお願いね〜」
ふむ、なかなか気が利くじゃないの。
ほんの少しだけポイントアップしてやろう!
と言う事で。
女子はお喋りタイムだ。
「ふう…みんな、今日はお疲れさま」
「もう足がパンパン…でも楽しかったよ!」
「そうよね、こんなに長く歩く事もなかったから凄い疲れたけど…心地よい疲れでもあるわね」
「わ、私は自領が田舎だから歩くのは慣れてると思ってましたが…山登りは初めてだったので、やっぱり足が棒のようです」
「フローラさんは…ラズレー領だっけ?」
「あ、はい。何も無い田舎ですけど…」
確か、王都から南の海に面した小さな領だったと思うが…
「何も無いなんてことは無いじゃない?確か、結構有名なリゾート地だったよね」
そう。
暖かな気候と穏やかな海で貴族とかにも人気の高級保養地だったはず。
「え、ええ…でも、それ以外はホントに何も無いですよ」
「そんなこと無いよ!いいなぁ〜、海。行ってみたいな〜」
「あれ?ウィラーにも海はあったよね?」
「そうだけど…海沿いは漁村ばかりでリゾート地みたいなのは無いよ。海の幸は豊富だから食べ物は美味しいけどね!」
「アダレットは半島なので海は比較的身近なんですが…やはりリゾート地のようなところはあまり有りませんね」
ふ〜ん…あまり海水浴とかはメジャーじゃないんだね。
確か、水着とかは前世に似たようなものがあったと思うので、全く無いわけじゃないとは思うけど。
「じゃあさ、今度夏になったら皆で泳ぎに行こうよ!」
「あら、いいわね。まだ先だけど…長期休暇もあることだし、友達同士で旅行なんて素敵だわ」
「も、もしラズレー領にお越し頂けるなら、精一杯おもてなしさせて頂きます!」
ふんすっ!って感じでフローラさんは言う。
まぁ、私もステラもメリエルちゃんも王族だから気合が入るかもしれないけど…もし遊びに行くことがあれば、友達として受け入れてくれると嬉しいかな。
もう少し仲良くならないと難しいかもだけど、幸い隣のクラスなので接する機会は多いね。
実は武術の授業で薙刀を教えているうちの一人だったりするし。
「でも、長期休暇ってステラとメリエルちゃんは帰国したりはしないの?」
「アダレットは往復するだけで休暇が終わっちゃうから…卒業までは戻る予定はないわ」
「わたしも〜。アダレットよりは近いけど」
「それもそうか…レティの鉄道が早く実用化されて路線網が広がれば気軽に移動できるようになるんだけどね〜」
レティには是非頑張ってもらわないとね。
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