第九幕 24 『登山計画』


「2組の3班はあなた達…?」


「そうだよ!よろしくね、カティア!」


「…宜しく頼む」


 野外実習で私達と合同班を組む2組のメンツは、メリエルちゃんと、ガエル君、そして直接はそれほど話したことがない男女…クリフ君とフローラさんだ。


「よろしくね、みんな。じゃあ早速だけど、野外実習の計画について打ち合わせしましょうか」


「先ずはリーダーを決めないとですね」


「お!リーダーならオレっちが…」


「却下で」


「却下です」


「却下よ」


「ダメだね!」


 フリードが言いかけたところで、女性陣が速攻で拒絶する。

 コイツにリーダーなぞやらせる訳にはいかないと言う強固な意志が感じられるね!

 あの大人しいステラまで……と言うか他のクラスの人にまで拒絶されるなんて、どんだけなんだよ。


 女性陣から総スカンを食らったヤツは隅っこの方で体育座りしてるが、まぁ強メンタルだから放っておいてもそのうち復活するだろう。




「…では、誰にしましょうか?野外活動の経験がある人とか…


「あ!だったらカティアは?冒険者やってるんでしょ?」


「え?私?ん〜…確かにそうだけど、野営とかはあまりやったことないよ?」


 メリエルちゃんが言うのにそう答えるけど、前世の【俺】は割と経験がある。

 


「でも、僕らよりは慣れてるんじゃないですか?」


「まぁ、そうかもね。採取依頼とかもよく受けてたし、食料調達なんかは出来ると思うよ」


「……食料を現地調達できる王女様」


 まあね、改めて聞くとヘンな感じだよね。


「じゃあ決まりですかね」


「カティアがリーダーで!」


「…異論無い」



 と言う事で、合同第3班のリーダーは私という事になった。

 


 よし、みんな私についてきなさい!

 …なんちゃって。








「それじゃ、計画を考えようか」


 そう言って私は地図を広げる。

 各班に一つずつ配布された、野外実習を行う地域周辺の地図だ。


 実習が行われるのは、王都から徒歩で半日ほどの山中で、幾つかある登山道の入り口から山頂を目指すことになる。


 地図には登山道や川などの水源も記されていて、しっかり確認すればそれほど心配は無いが…前世でもハイキングコース程度の山でも遭難したりする危険があるのでナメてかかってはいけない。



「私達は…ここから入っていくんだね」


 地図に記載された登山道入り口には番号がふられていて、それぞれの班の出発地であることを示している。

 登山道は一本道ではなく、いくつものルートが考えられるので、しっかり地図と照らし合わせながら現在地を把握して進まないと、迷ってしまう危険性はあるだろう。


 早朝に出ても、出発地点に着くのは昼前くらいになる。

 そして、登山道入り口から山頂までは、順調に行っても8時間はかかると言われている。

 そのため、途中で野営をするか…山腹に幾つかある山小屋を利用して一泊する必要がある。

 食料調達の時間も考えると、日が落ちる前には野営地に到達しなくてはならないだろう。



 これらのことを踏まえて、みんなと一緒にルート選定をしていく。


「どうせなら、トップでゴールしたいよな!」


 と、フリードが言う。

 …もう復活したのか。


 だが、まぁコイツの言う通りだね。

 折角のイベントなんだから一等賞を狙いたいね。

 別に成績に加点が付くわけじゃないけど、一位にはご褒美があるらしいし。

 …そして、最下位には罰ゲームもあるらしい。



「…トップは難しいんじゃないかしら?」


 ステラがそんなことを言う。

 …はて?何でだろ?


 と、不思議に思っていると。

 彼女がチラッ、と見た先は…メリエルちゃん?

 あ、なるほど…


「いかにメリエルちゃんを迷子にさせないか、が勝負のカギってことね…」


 深く頷くステラ。


「だ、大丈夫だよ!これだけ人がいるなら…さすがに私だって逸れたりしないよ!……たぶん」


 そこは言い切ろうよ…


 だけど、この娘の迷子は妖術でも使ってるのか…ってくらい面妖な事象だからね…


「とにかく、メリエルちゃんを皆で取り囲みながら目を離さないように進みましょう」




 最重要課題の対応方針を決めたら、あとは登山ルートを決めていく。

 水源から極力離れず、出来るだけ急峻な地形は避けつつ、なるべく距離が短くなるように…

 野営地をどこにするのかも重要だ。



「山小屋が使えるのなら、なるべく利用したいですね…」


「そうだね…ただ、人数的には一班でギリギリみたいだから早いもの勝ちみたいだね」


「でも、山小屋の周辺なら野営もしやすいのでは?」


「そうだね…じゃあ、このルートからこう行って…ここにしようか」



 そうやってルートを決めていき、計画書にまとめてから、後で先生に提出するのだ。

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