第九幕 10 『クラブ見学6』
最後に演劇クラブと合唱クラブを見学するために、大講堂へとやって来た。
大講堂は、舞台のような教壇を中心として、半円状・階段状に席が設けられている。
たしかにこれなら、劇などを行うこともできそうだ。
ここと、小ホール、大ホールを用いて学園祭などで公演したりするらしい。
私たちが講堂の中に入ると、壇上の両端それぞれに両クラブが集まっていた。
まずは演劇クラブに顔を出すことに。
「こんにちわ〜、見学に来ました〜」
「まあ!……まさか、かのエーデルワイス歌劇団の御方にお越しいただけるとは…!」
迎えてくれたのは、女性としてはスラッと背の高いキレイ系の先輩。
おそらくこの人が代表なのだろう。
演劇クラブと言うだけあってハキハキとした喋り方だが、どこか大仰で芝居がかった感じもする。
「あ、ウチのことはご存知なんですね」
「それはもちろん!この王都に住まう者でエーデルワイスの名を知らぬ者などおりませんよ。ましてや我々にとっては憧れの存在なのですから!」
「そ、そうですか、ありがとうございます」
ちょっと照れる。
「あ、申し遅れました!私は当演劇クラブの部長をしております、オーレリーと申します」
「よろしくお願いします。……オーレリー先輩、どうか他の新入生に接するのと同じように話していただければ…」
「…そう?それじゃ、そうさせてもらうわね。それにしても、ホントにカティアさんに来てもらえるとは……あれ?でも、エーデルワイス歌劇団の劇には……」
「……はい、私は劇には出たことが無いですね」
流石に演劇やってる人なら知ってるよね……
「そうよね。歌姫やってるとはいえ、あなたみたいに舞台映えする娘がなんで出てこないんだろう?って思ってたのよね」
「あ、それ私も不思議だった」
「そう言えばそうですわね」
「あ〜……その、私って演技がヘタで……」
しかし!
私には秘策がある!
歌姫である私だからこその一手が!
「先輩、ミュージカルってご存知ですか?」
「ミュージカル?いえ、知らないわ」
やっぱり、この世界には無いみたいだね。
簡単にコンセプトを説明する。
私にとって大事なのは、セリフが全編通して歌であるという点なので、そこをより強調する。
先輩は興味を持ってくれたらしく、フムフムと頷きながら私の説明を聴いてくれた。
「セリフが歌に……面白そうじゃない!」
おお…!予想以上の好感触だ!
シクスティンさんに説明した時も、なかなか食い付きは良かった。
その後もエーデルワイス歌劇団の稽古の様子や、裏話を教えてあげたりしたら凄く喜んでくれた。
見学としては通し稽古を見せてくれた。
私の目から見ても結構ハイレベルで、学園の卒業生をスカウトするのも有りかも…と思った。
次に、同じく大講堂で活動している合唱クラブを見学することに。
私としてはここが本命と考えていた。
「ようこそ合唱クラブへ!私は部長のクラリスよ、よろしくね!」
「「「よろしくお願いします!」」」
部員は二〜三十名くらいかな。
あとは私達の他にも新入生が何人か見学に来ていた。
「さて、早速だけど私達の活動内容を説明するわね…」
説明してもらったところによると……まあ、合唱クラブと聞いて想像できる範囲ではあった。
学園祭や合唱コンクールでの入賞を目指して普段は練習を行っているとの事。
王都で行われる合唱コンクールでは、ここ数年連続で入賞を果たしており、界隈では有名らしい。
「あのエーデルワイス歌劇団の歌姫であるカティアさんが入ってくれれば、より盤石になること間違いなしよね」
「ん〜、でも私、合唱ってやったこと無いんですよね……息を合わせて、声を揃えて…と言うのは、また違った難しさがあるのでは?」
「もちろんそれはそうだけど、ちゃんと練習すれば大丈夫よ。カティアさんなら基本は問題ないし、すぐに合わせられるようになるわよ。それに、
へえ…ソロパートもあるんだ。
それならすぐにでも出来そうだけど、折角だから皆で声を揃えて歌うのを楽しみたいな。
「じゃあ、見学に来てくれたことだし、コンクール向けに練習してる曲を一曲歌いましょうか」
そして先輩たちが実際に合唱を聞かせてくれたんだけど…
凄い……
これだけの人数が、全くズレることもなくハーモニーを奏でるのはまさに圧巻だった。
私もあの中に混じって一緒に歌いたいと思い、もう殆ど入部の意志は固まっていた。
「どうだった?自分で言うのもなんだけど、中々のものでしょう?」
「はい!凄く感動しました!」
「本当に素敵でしたわ」
「確かに凄かったわ。私は音痴だから羨ましいわね…」
え?ステラって音痴なの?
イメージ沸かないなぁ……
「でもステラは歌うこと自体は好きでしょ?ご機嫌な時は、よく鼻歌歌ってるもんね」
「な!?ちょ、ちょっと!もう…恥ずかしいからバラさないでよ、シフィル…」
あらら、真っ赤になっちゃって…可愛いな。
「それじゃあ折角だから、あなた達の歌も聞かせてくれない?」
「あ、いいですよ!」
「「「私達はパスで〜」」」
と言う訳で、私と…あと何人かの新入生がそれぞれ歌を披露することになった。
そこで、私は運命の出会いを果たすことになる。
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