第九幕 3 『ホームルーム』


「さて、もうあまり時間もないし、今後の話をしようか」


 ……先生、私への質問の方に時間かけてませんでした?



「まぁ、と言っても…一年生は必修科目中心で実技以外の殆どの授業はこの教室で受けることになるから、それほど難しい話はないな」


 カリキュラムの概要は合格通知に同封されていた資料にも記載されていた。

 先生の言うとおり、最初は必修科目中心で皆大体同じ授業を受けることになる。

 一年の後期から徐々に選択科目が増えてきて、自分が受けたいものを選択していく事になる。

 少しずつ専門性を突き詰めていって…とは言っても完全に必修が無くなるわけではなく、ある程度幅広い分野を修めることになる。

 そのあたりがアスティカントの学院とは異なる点だ。



「…と言うわけでだな、当面は始業から終業まで大体はこの教室で過ごすことになる。仲良くするようにな。それから、このクラスの時間割はそこの黒板に掲示してある。あとでメモしておけ」


 この世界では印刷技術や製本技術はそこそこあるので、一般庶民でも(やや高級品ではあるが)買えるくらいに本なんかは流通してるけど、連絡事項をプリントにして気軽に配る…とまでは行かないようだ。








「あ〜、次にだな…このクラスのクラス長を決めておきたいんだが…」


 ……

 この流れは……

 一先ずここは先制攻撃しておく!


「立候補、または推薦は「はい!ユーグ君が良いと思います!!」……だそうだが?」


「…何で僕なんです?」


「それです!そのインテリメガネ!それこそは級長の証であると古来より決まっているのです!」


 必殺!!

 ゴリ押し!!


「「「あ〜、確かに!」」」


 ふっ…皆も分かってるようだね。

 キミたちと上手くやっていけそうだよ。


 何か流れで私がクラス長にされそうな気がしたから先手を打たせてもらったよ。

 ユーグには悪いけど…メガネ云々は冗談にしても、真面目な感じで適任だと思うし。



「………分かりました。では、クラス長として副クラス長にはカティアさんを指名します」


「!?」


 何だと!?

 て言うか、副クラス長なんてあるの!?


「あるぞ。手間が省けたな」


 心を読まないで!!


 くっ……謀ったな!!


「…自業自得だよね」


「そうですわね」


 だから心を読まないで!?



「おい、ユーグ!!ずるいぞ、抜け駆けしやがって!!」


「「「そーだ!そーだ!」」」


「はははっ!早速打ち解けたようで何よりだな!」


 いやいやいや…殺気立ってますよ。

 殴り合っても友情は芽生えなさそうだ…



「なかなか面白そうなクラスじゃない。ねえ、ステラ?」


「そ、そう………かしら?」

















 そんなこんなで混乱しながらも、結局はユーグがクラス長、私が副長と言う事に。

 …まあ、ノリでやってただけなんで、別にそんなに嫌なわけじゃないけど。



「じゃあ、ホームルームはこんなとこだな。今日はこれで終わりだが、明日から早速授業があるからな。遅刻しないように。ああ、それから…今日はお前たちの先輩どもが校内の各場所でクラブ活動の紹介をやってる。このまま帰っても良いが、興味があれば見ておくといい」


 クラブ活動か……

 興味はあるけど、私は劇団の公演があったりするからなぁ……

 でも、面白そうだし見学だけでもしておこうかな?









「ねえ皆、クラブ活動見ていく?」


「あ、それなら私はねえ…『魔道具研究会』を見に行きたかったんだよね」


「私は『武術クラブ』を見たいですわ」


 ふむふむ。

 レティは趣味と実益を兼ねて、ルシェーラは…まあそうだよね。


「私は『乗馬クラブ』を…」


「『攻撃魔法研究会』が気になるわね」


 ステラは意外な感じだけど……いや、想像してみたら結構絵になるね。


 そして『攻撃魔法研究会』…攻撃魔法限定なの?

 何だか物騒な雰囲気だよ。

 特にシフィルとの組み合わせが。




「じゃあ、皆が見たいやつを順番に見ていこうか。まだ時間もたっぷりあるしね」


「カティアは何か見たいのはないの?」


「ん〜、そうだね……武術は私も興味あるね。あとは『演劇クラブ』とか『合唱部』とか…かな?」


 ウチの歌劇団では劇に出してもらえないから、密かに期待してたりして…





「あ!カティア!これからクラブ見に行くの?」


 クラブ見学に行こうと皆で教室を出たところで、メリエルちゃんもちょうど隣のクラスから出てくるところだった。


「そだよ。一緒に行く?」


「うん!ぜひぜひ!私はねぇ〜、『武術クラブ』を見たいの!」


「……えっ?」


「あ〜!馬鹿にしてるな〜?苦手を克服したいって思っても良いじゃない!」


「ああ、ううん、ごめんなさい。ちょっと驚いたので…う、うん、良いと思うよ。苦手を克服するのは、だ、大事だよね」


 もはやそう言うレベルでは無さそうだったけど、その言葉は飲み込んでおいた…





 と言うわけで、メリエルちゃんも加わって皆で色々見て回ることになった。

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