あなた、恋愛相談を受ける側の人間ですよね? 〜赤い糸を紡ぐ立場の先輩は、自分の恋愛がおぼつかない
モノクロウサギ
第1話 プロローグは夕陽とともに
夕暮れの教室に、その人はいた。
俺より一つ上の三年生。そして学校でも有名な先輩……らしい。
有名な理由が、あまり興味のある分野ではなかった。だから以前、友人に教えてもらうまで知らなかった。
「……あの、
「うん?」
柊円香。学校一の有名人にして、生徒のみならず教師からも頼られる人気者。
「はぇー……」
こちらを振り向い柊先輩を前にして、自然と変な声が漏れる。馬鹿らしいことこの上ないが、間抜けな反応をしてしまうほどに先輩は綺麗だった。
肩まで伸びた癖のない黒髪に、スっと整った目鼻立ち。絵に描いたようなクール系美人なのに、身にまとう落ち着いた雰囲気が近寄り難さを感じさせない。
そう言えば、友人であるアイツはこんなことも言っていた。
『柊先輩はな、すげぇ美人ってことでも有名なんだ。それでいて取っ付きやすい! だから告白した男子は数知れず。そして全員が玉砕した。だから【高すぎない高嶺の花】なんて呼ばれてる』
【高すぎない高嶺の花】。その親しみやすさもあって、誰からも好かれているから『高すぎない』。
だから多くの異性が手を伸ばす。勘違いして、俺ならイけると思ってしまう。……でも届かない。だからやっぱり『高嶺の花』。
通り名の意味がよく分かった。恋愛に疎い俺ですら、一人の男として『こんな人と付き合ってみたい』と思ってしまうほど。
結構な数の男子生徒が、この先輩にやられてしまうのも無理はない。ただの女子高生というよりも、アイドルや女優とかにカテゴライズされているような人だ。
「あー、そのー……」
言葉が詰まる。あまりにも場違いというか、分不相応な気がしてならない。
別にやましいことはないんだ。好奇心で声をかけたわけではない。ちゃんと用事は存在する。
それでも気後れしてしまう。柊先輩はそれくらい綺麗で、オーラのある人だから。
割とひねくれ者の自覚のある俺にとっては、関わることすら畏れ多いと感じてしまう。部屋に土足で上がる後ろめたさのようなアレだ。
「はぁ、ふぅ……」
……とは言え、吃っていても何も始まらないわけで。さっさと用事を済ませて、早々に退散してしまおう。
「えっとですね──」
「申し訳ないのだけど、お引き取り願うわ」
「……へ?」
おい誰だ、この先輩を取っ付きやすいって言った奴。要件言う前にぶった切られたんだが。
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