第50話:木工製品2




 とても素敵な飾り棚キャビネットは、2階の雑貨店の1番奥に置かれた。

 これはアザトースのアドバイスだ。

 高価たかい物は奥に置く。これはこちらの世界でも同じらしい。


 値札は【時価】で【オーダーメイドのみ】との注意書きがある。

 おそらく暫くは注文が来ないだろうが、今は見本の箪笥やテーブル、椅子も制作して貰っているので問題無い。

 注文が来なかったら、俺の部屋の家具を全て豪華に作り替えよう。



「陛下が欲しいって言ってる」

 は?

「陛下って王様?」

「他に誰が居る」

 アザトースに呆れられてしまった。


 や、だって、街の商店の家具だよ?

 物は良いよ、物は。

 多分、どこに出しても恥ずかしく無い出来だよ。

 俺としては「うちの従業員凄えだろ?」って自慢したいくらいよ?


 でもさ、俺のイメージする王族って、お抱えの職人とかいて、有名ブランドで周りを固めてるんだけど。

 無名の元獣人奴隷の職人でも良いわけ?


 と、言うのを、そのままアザトースへ伝えてみたら、更に呆れられた。

わざとだろうが。元奴隷なのはもう奴隷紋が無いからバレないだろう?陛下が獣人の家具職人に依頼をしたとなれば、獣人の地位向上に一役買えるだろう」

 なるほどな。



 この国では差別は無いが、でもまだ決して待遇が良い訳ではないみたいだしな。

 いや、獣人だけしゃなくて、一部の人間を除いてちょっと貧乏なんだよな。

 例えるならば、江戸時代の日本……をモデルにした時代劇。

 越後屋と悪代官だけが金持ち。


 今だと、俺が越後屋だけどな!!


「ちょっとアザトースさ、俺に「お主もワルよのう」って言ってみて」

「は?ヤダよ」

 悪代官、ピッタリなのに。


 そういえば店の名前が決まってなかったな。

 越後屋にしようか。

 大黒屋でも良いか?

 上総屋とか、伊勢屋ってのもあるな。

 おぅ?意外と思い出すと色々あるもんだな。




「ご主人様、頼まれてたヤツが出来たぞ」

 ゴツイ木工職人の熊五郎が、木箱を抱えてやってきた。

 因みに名前の熊五郎は、俺が熊家族を「熊兄さん」「熊お母さん」と呼ぶのを聞いて、自分にも「熊」を付けて欲しいと言ってきたのだ。

 聞いたら兄が四人居たらしいので、熊五郎さんだ。


 熊五郎が持って来た木箱を床に置き、中から木彫りを順々に取り出し、テーブルに並べだした。

「シロ様、ラッキー様、熊兄さん、熊お母さん、熊姉さん、子熊」

 手の平サイズの置物で、皆とても躍動的で生きてるみたいだ。


「ふおぉぉぉお!」

 凄いな!マジで。

 澄まして立ってる女神像とかよりも、こういう動きのある物の方が良いな!

「ブフッ」

 最後に出てきたのは、ボールスと熊兄さんが相撲をとってるところだった。

 これはぜひ、ボールスにプレゼントしてやろう。



「おぉ!素晴らしい!ありがとう。騎士団の机に飾ろう」

 ボールスに相撲像を渡したら、普通に喜ばれてしまった。

 あれ?



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