第44話:完璧だ!




 女性陣のセンスに任せて、棚に商品を飾る為に必要な物を買ってきてもらった。

 高級な食器を置くのは、濃紺な布の上だ。

 置物は、女神像らしきものは明るいピンクや黄色のレースを重ねた上に。

 熊や兎、鹿や虎等の動物シリーズは、緑の布の上。


 魔石?宝石?は、素の色が保たれていたので、その色に合ったレース編みが敷かれた。

 無機質的な置物も、何か変な色味が無くなってお洒落だな。

 金属類は、錆やくすみが落ちて、ピッカピカである。

 でも素の色はあるので、銀は銀色、金は金色、青銅は緑青ろくしょうが消えて元の金色や白銀色になってしまった。


 色が白くなった物と、色が残った物の差がわからんな。

〈ヨッシー様の感覚ですね。金属や天然石は色が落ちるはずは無いと思っているのでは?逆に煉瓦や木は色が落ちると思い込んでいるのでしょう〉

 なんだろう。微妙に悪意を感じるぞ。




「ヨッシー様!カフェの内装完了しました!」

 元気に俺を呼びに来たのは、テッサだ。

 なぜか制服まで着てる。

 テッサは従魔術師なので、店頭に出る予定は無いはずだが……?


 案内されたカフェスペースは、とても可愛く、本当に可愛くなっていた。

 どこの夢の国?

 可愛いけど、本当に可愛いけど、これは客を選ぶぞ。


「すまん。通路の左右でコンセプトを変えてくれ。これでは年配層や男性客が入り辛い雰囲気になってしまう」

 原宿や渋谷にあるカフェなら、さぞかし大入りだっただろう。

 だが、ここの客層は多分もう少し上だ。

 俺の言葉を聞いて、明らかにホッとした顔をしたマリンがいた。



 片側がレースでヒラヒラなお姫様がコンセプトっぽい雰囲気。

 もう片方は、植木鉢や自然木のオブジェ等のあるボタニカルな感じだ。

 うんうん。良い感じ。


 料理は、キッチンっぽく見せかけたカウンターに転送ボックスを置いて、屋敷のファミレスから魔法で出来たてを送ってもらう。

 汚れ物は、もう1個の転送ボックスでファミレスへと送る。

 完璧!




<うわぁ!凄いね!>

 突然地面からラッキーが顔を出した。

「うわっ!」

 俺はそれにつまずいた、というより体当たりをかました。

 床は通り抜けるのに、俺にはぶつかる不思議。


「見に来たのか?」

<うん!だって、ヨシツグが構ってくれないから、自分から行かないと!>

 うわぁ、ゴメンよ~!

 確かに最近は獣人奴隷や、商店の件で動き回り、あまり二匹と遊んでなかった!



「シロもいるのか?」

<はい>

 シロが遠慮気味にラッキーの隣に顔を出した。

 二匹の顔の間に立つ形になった俺は、両手でワシワシと二匹の頭を撫でた。


 二匹がもう少し小さかったら、常に連れて歩けるんだけどなぁ。

 せめて!お座りしたら俺の身長位に。

〈なれるぞ〉

 なぜかガイアが断言する。

〈二匹が必要だと思えば、サイズの変更は可能でしょう。今は必要と思っていないのでは?〉

 マ~ジ~か~!!


「シロ、ラッキー。昔の大きさになれば、また一緒に色々な所へ散歩に行けるぞ」

 とりあえず、二匹が1番理解しやすいように言ってみた。

<そうなの!?>

<あら、それは素敵ね>

 床からスポーンと飛び出した二匹は、ピカーッて光って、昔のまんまの姿で床に着地した。


「シロ!ラッキー!」

 二匹を抱きしめながら、俺は泣いていた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る