第31話:資産が増えました……?




 そもそも何屋なのかも知らずに引き取った支店。

 卸問屋?仲買人?

 よくわからんけど、地方や他国から物を仕入れて、他の店に納品する仕事をしていたようだ。


 こっちの店の従業員も隣国の人間だったようで、店には誰も居なかった。

 店にある商品は俺の物だそうで、そのまま置かれている。

 近くの箱を開けてみると、すぐに駄目になる食料品とかでは無いようだった。

「何だこりゃ」

 単なる木にしか見えない。


〈そちらは香木こうぼくです。その箱の中のは魔除けですね〉

「魔除け?魔物除けではなく?」

〈寝ている間に夢に悪いものが入らないようにという、おまじないですね〉

 ふ~ん。気休めね。

〈いえ、弱い夢魔等は弾かれますので、一応効果はあります〉

 夢魔!


「ヨッシー様、こっちの箱は木工品だぞ」

 ボールスが奥の箱を開けて中を見ている。

「こっちは魔導具だな。1回にコップ1杯の水しか出せないヘボいヤツ」

 アザトースが箱から魔導具を取り出して、観察している。

 そんなアザトースの手から、ボールスが魔導具を取り上げた。


「そのコップ1杯で助かる時が有るのだぞ!どこでも水が出せる魔術師には解らんかもしれんが、川も無い山の中で」

「ハイハイ、私が悪うございました」

 仲良いよな、二人。

 ちょっと羨ましいと思う。



 アザトースは俺を「ヨッシー」と呼ぶが、ボールスは未だに「ヨッシー様」だ。

 もっとも俺もまだ「ヨシヒコ」を否定していない。

 シロとラッキーだけが俺を「ヨシツグ」と呼ぶ。


 あれ?シロとラッキーが俺を「ヨシツグ」と呼んでいるのに、なぜバレてないの?

〈従魔の声は、基本的に契約者にしか聞こえません〉

 え?嘘。

 俺、配達鼠の声が聞こえたけど?

 あれは動物だったからか?


〈それがチートってヤツだな!〉

 あぁ~、ナルホド~、そうか~。

 ぶっ壊れ性能ね。

 じゃあ、従魔術師家族の従魔とも会話出来たりするのか?

〈多分出来るな!〉

 マジか!やったね!


 あそこの従魔達がちょっと遠慮気味で気になってたんだよ。

 せっかく広い庭があるんだから、走り回って欲しいじゃん?

 鳥もさ、飛んでる姿ほとんど見ないし。



〈ヨッシー様、今は商品に集中した方が宜しいかと〉

〈しっかりしろ、ヨッシー!〉

 アートモとガイアが俺を「ヨッシー」と呼ぶのはわざとだろうな。


 あ、アザトースとボールスがじゃれ終わってこっち見てた。

「ヨッシーてさ、たまにボーッとしてるよな」

 ナビの声も俺にしか聞こえないから、ボーッとしてるように見えるのか。

「ヨッシー様、何か悩みがあるなら自分が」

「無い!別に無いから!」

 そんなあわれむような目で見ないで!




 あの商人は、獣人奴隷の扱いは最低だったが、商人としてはちゃんとしていたようだ。

 魔導具も偽物は1つも無かったし、木工品も良い保存状態だったそうだ。

 香木も、違法な物は無かったらしい。

 違法な物って、アヘンとか大麻とかかな?


 それと魔獣除けのこうもあった。

 強い魔獣のウ○コだって聞いて、思わず投げ捨てちゃったよ。

 そのままじゃなくて、錬金術で加工されてるんだって。

 基本はグリフォンのウ○コらしい。


「シロとラッキーもウ○コするなら、凄い魔除けが出来るのにな」

 アザトースが残念そうに呟く。

 シロとラッキーは神獣なので、排泄しないんだよ。

 ウ○コが欲しいなら、エドアルドのシルバーウルフから貰うと良いよ。うん。



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