第30話:日常っぽい非日常




「おはようございます、ヨッシー様」

 朝、部屋から出ると獣人兄妹に迎えられる。

 もう奴隷ではないし、子供なのだから好きに過ごして良いと言ってあるのだが、俺の役に立つ事が好きな事らしい。

 立場としては、彼等は居候だ。

 書類上は俺の奴隷だが、隣国の獣人奴隷は終身で期限が無い。

 どうしたものかと、国の偉い人と相談中だ。

 アザトースが。


 だって、俺は勉強した程度しかこの国の事とか、法律とか知らないし。

 でも孤児院に預けるってなったら、うちで引き取るつもりだ。

 スーザンも「獣人だろうが子供は子供、任せてください」と言ってくれたし、マリンも「子育てはした事ないけど、躾は任せなさい」と頼もしくも恐ろしい事を言ってくれた。

 二人は俺の奴隷では無いのだが、協力してくれるなら甘える気満々だけど、何か?



 子供達は既に仲良しだ。

 初顔合わせの時、テッサのピンクスパイダーを手に、目をキラキラさせていたのは獣人兄。

 肩や頭にルカの鳥達を乗せて頬を上気させていたのは獣人妹。

 異種族間の結婚って、この国ではどうなの?って心配になるほど仲良しになった。


 俺は本人達の気持ちを優先するよ!


 あれ?その前に、俺の伴侶は?

 ハーレムとは言わない。

 せめて恋人を!俺に恋人を!!

 もうすぐ30歳なのよ?俺。

 まぁ魔法使いになる心配は無いけど。

 いや、既に魔法使いだった。

 意味が違うけど!!


 ここは強く言っておく!

 30歳になって魔法使いになったんじゃ無いからな!!




「ただいま~」

 グッタリとしたアザトースが帰って来た。

 庭でラッキーと遊んでくれたボールスよりグッタリしてないか?

 因みにボールスは、自分の腕よりも太い棒をラッキーに投げていた。

「鍛錬になるな!」

 なんて言って、汗だくになってたし。


 ボールスはそのうち上半身裸になっていたら、洗濯を干しに来たマリンに「女性も居るのです。少しは配慮というものを覚えてください」と叱られていた。

 俺は近くでシロのブラッシング中だったので、コッソリ気配を消していたよ!


 床に座ったアザトースは、座卓の上に書類を並べる。

 この部屋は本来パーティールームだったらしいが、俺がペットの部屋に改造した。

 土足禁止の部屋で、座布団と座卓が置いてある。

 アザトースに座布団を勧めたら、床の方がひんやりして気持ち良いと断られた。

 良い床材使ったからな!


 部屋の隅には特大サイズの布団とクッションがあり、今はシロとラッキーとボールス、そして獣人兄妹が昼寝している。

 今の獣人兄妹の仕事は、健康になる事だからね。

 子供の昼寝、大事。



「あの商人、思ったよりヤバかった。支店は隣国に10、この国に1、従業員は五十人位だけど、獣人奴隷がやはり五十人位居るらしい」

 うわぁお。

「ソレが全部ヨッシー様のモノデスヨ」

 棒読み怖い。


「えぇと、隣国の支店と従業員要らない。退職金代わりに支店あげるから、好きにしてもらって。獣人とこっちの支店は貰うわ」

「はいはい。では、ヨッシー様の下僕の私は、また手続きに行って参りますか」

 よっこいしょ、とアザトースが立ち上がる。


「えぇと、お手数お掛けします」

 本気で、本当に、申し訳ないと思ってます。

「まぁ、こういうのも含めて、俺達はヨッシーのだからな」

 アザトースにサムズアップされた。

 こっちでもサムズアップってあるんだな!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る