第17話:俺の常識として




 可愛いシロとラッキーを伴って、屋敷の中へ入った。

 うん。これはさすがに、駄目な感じかな。

 高い絵画や壺などが置いて無かったのは幸いだ。

 イヌ科というより、ネコ科の動物が暴れ回ったかのようだな。

 荒れ具合が立体的なのだ。


 天井に足跡があるのは、なぜなのだろうな!

〈太陽と月を追う狼だからだな!飛べてあたり前田のクラッカー!〉

 何だソレ。二重の意味で何だソレ。

 飛べるのか!壁抜けも出来るし、何でもありだな。

 そして前田のクラッカーって何?


〈ヨッシーは、あたり前田のクラッカー知らないのか?〉

 え?何ソレ。

〈ヨッコイショーイチは?〉

 知らないかな。

〈情報の範囲、広過ぎた~!〉

 ガイアが何か騒いでいるけど、放置した。



「シロ、ラッキー、これは何かな?」

 荒らされた室内を示して、二匹を呼ぶ。

<ごめんなさい。何となくヨシツグの匂いがするのに、姿が無かったからつい……>

 完全に真下を向いてシュンッとしているシロ。

<僕!僕がほとんどやったから!シロは悪くないよ!>

 項垂うなだれるシロの横で、ラッキーがシロを庇う。

 いや、庇ったわけじゃなくて、単なる事実かな。


「何にせよ、部屋を荒らして良い理由にはならん!」

 俺の叱る声に、二匹揃ってシュンッと下へ向いた。

 そのまま無言で待つ。

 そんなに長い時間じゃないけど、こういう時間は長く感じるな~。


「もうやっちゃ駄目だぞ」

<はい>

<うん!>

 良い返事をした二匹の頭をワシャワシャと撫でた。

 二匹の大きを考えたら、俺が撫でる範囲なんて微々たるものだが、とても喜んでいた。

 ううん。ちょっと、尻尾を振るのは加減を覚えてもらわなきゃだな。




 足跡などの汚れは、とりあえず浄化クリーンを屋敷全体に掛けた。

「……規格外め」

 聞こえてるぞ、アザトース。

 コイツの事だから、わざと聞こえるギリギリの音量で言ったんだろうな。


「倒れてた家具とか調度品は全部起こした」

 おぉ!さすが騎士様!力仕事は得意なんだな。

 俺だったらまだ半分も終わってないだろう。

 しかし、エントランスから廊下の突き当たりまで、何かを飾れと言わんばかりに、腰くらいの高さの石柱みたいなのが置いてあるんだよなぁ。

 花とか飾るのか?

 壺?ミロのヴィーナス像とか?


 昔行った旅館では、廊下の処々に飴とか金平糖とか、日持ちする菓子が小袋で置いてあったんだよな。

 あれ良いよな。置こうかな~。

 通りすがりに手に取って、ポイッて口に放り込めるように。


 そういえば……

「掃除とか洗濯とか食事の用意とかは、各自がやるって事で良いのか?」

 ん?俺、変な事言ってないよな?

 何で二人とも口を開けて、眉間に皺を寄せて驚いてるんだ?


 メイドさんや執事が必要かなぁって思ってたけど、屋敷全体の掃除は浄化クリーンで済むから、後は個人で何とかなるよな。

 食事は材料だけは買いに行かないとだけど、三人+二匹の為に、メイドさんや料理人を雇うってどうなの?

 下手すると従業員の方が人数多くなるよね。

 ここで勿体無いと思っちゃうのは、俺が小市民だからか?



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