佐々木 煤

三題噺 「スーパー」「消しゴム」「覗く」

 小学校では文房具が身分のステータスとなる。流行っているアニメの筆箱を持っていれば頂点に立てるし、可愛い消しゴムを持っていれば人気者グループに入ることができる。そんな文化に身を置く私は、スーパーで文房具を買っていた。私の意志じゃない。母が安いからといって近所のスーパー以外で買うように言ったんだ。おかげでクラス内で私は人気者グループに入れない。別に入りたいわけじゃないけど、見栄ってものがある。

 消しゴムが小さくなったので、母に言うと1000円くれた。

 「すこやかスーパーで牛乳とカレーのルー買ってきて、余ったお金で消しゴム買っていいから」

カレーのルーが500円、牛乳がだいたい150円だから、駅前の文具屋さんで消しゴムが買える…!

 「ごめーん、麦茶のパックもお願いね!」

やっぱりいつもの100円消しゴムしか買えなさそうだ。

 家からすこやかスーパーは野川をわたってすぐにある。頼まれた物と消しゴムを買って早歩きしたら15分もかからない。早く済ませたいから適当なジャンパーとエコバックを持って家を出た。スーパーに着いたら、目当てのものがあるコーナーだけに寄ってお会計を済ました。小走りで野川の小橋を渡っていると、足元に小さな影が横切った。気を取られて前のめりになって転んでしまった。とっさに手をついたので痛くはなかったが、エコバックの中身をぶちまけてしまった。小さな消しゴムは転がって川の方へ落ちてしまった。

 手に届く場所に落ちていないか、小橋の下を覗くと大きな蟹がいた。赤くて、バスケットボールぐらいの大きさの蟹がいた。ここら辺では沢ガニしか見たことない。もう少し近づいて見てみようと川岸に下りようと動いたら蟹がギンとこちらを見た。蟹はわなわな震え、長いはさみをこちらによこしてきた。はさみには100円消しゴムが挟まれていた。ということは、さっき私の足元を駆けていったのはこの蟹?消しゴムをとると蟹は素早く走って行った。浅瀬の小川のしぶきが私にかかっていった。

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佐々木 煤 @sususasa15

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