ホラーの扉
水月美都(Mizuki_mito)
ホラ吹き佐吉
怖①
――むかしむかし――
あるところに嫌われ者の佐吉と云う男がおりました。
いつも、ホラ吹き噺ばかりしていた佐吉を周りの人は誰も信じませんでした。
「庄屋の嫁さまは、ありゃあ狐が化けてんだ」
「傘屋の浪人は人斬りが忘れられねえで夜な夜な旅人を見付けては斬り捨てしでんだ」
「飯屋の女将はよそから童子を拐って来ちゃ、自分どこで食べてしまう……」
どれも、とても信じられねえ噺ばかり。
しまいには、童子まで童唄で遊ぶ始末。
『ほらふき佐吉が、またいった。庄屋の嫁こはきつねだど。商いさぼった、でっちがね、沼のカッパと仲良しだ』
「おめら、おらのごと、ほらふきだど!」
童子たちは、佐吉に追われながらも囃したてます。
『あるとき、ほらふき佐吉はね、自分でいった、ほらのせい、嫌われ者になっただと』
そんな佐吉にも、遅い春が巡って参りました。
佐吉の生計は親が残してくれた、田畑になった米と野菜を、町に売り歩き稼いでいます。
ある日の事、佐吉が畑で採れた野菜を売りに町へ出掛けて行きました。
「野菜は要らんかい~畑で採れたばっかの生きの良い野菜だど」
おっきな声で売り歩く佐吉の前に、「下さいな」と涼やかな声が呼び止める。
声の主を見渡せば、ほんにまあ綺麗な、おなごが立って居た。
『ほらふき佐吉も、嫁こきて、ほらふき言わなく、なっただと』
佐吉の嫁はあの、町で声を掛けてきた娘でした。
佐吉は嬉しくて、仕事の合間を見ては、嫁の顔を見に帰ります。
端から見ても、そりゃあ中の良い夫婦に見えた。
だけども、その嫁について周りの人たちが噂をしてるのはまだ、知る筈もない。
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