第3話 ハイキックな彼女
日野先生との衝突を
「よけてー!」
僕はとっさに叫んだ。彼女と僕の視線が交わる。彼女は一瞬避けようと身体を動かしたが、間に合わず僕と衝突した。
彼女は僕との衝突の衝撃に耐えることが出来ず、後ろに倒れ込み、そのまま僕は彼女を押し倒すように
「いったー」
彼女は僕が覆い被さった状態のまま少し
彼女は同じクラスの
雪乃だけはまずい。
雪乃の表情は僕を睨みつけるように変わっていく。
「はやく、どきなさいよ!」
「ご、ごめ――」
雪乃は僕の声を最後まで聞く事なく、僕の身体を振り払った。そして、起き上がると同時に雪乃の上体は少し下がり、左脚で踏み込んだ。
一瞬の
僕は格闘ゲームが好きでよくやっているのだが、ゲーム知識で無双する物語が少し前に流行ったようだ。
そう、格闘ゲームの知識を今使って、この難局を乗り越えることにする。
まずは、当たり判定の把握である。雪乃の右脚ハイキックの当たり判定は……右脚だ。そしてまずはガードだ。ハイキックをガードするには上段ガードでなければならない。それには、十字キーを進行方向とは逆の方向を押せばいいだけである。簡単だ。僕は心の十字キーを押した。
そして、雪乃の右脚は僕の顔面を正確にとらえ、僕の身体は宙に浮き、数センチ空中を移動し日野先生の足元へと倒れ込んだ。
……ゲーム知識は役に立たなかった。
日野先生の足元へと倒れ込んだ僕は、
「青ですか」
日野先生は何言ってるんだ? というような顔で僕を見たが、やがて何かに気付いたように一歩後ろへ下がり、顔を赤くした。
「
「な、なんで!」
「教師へのセクハラ行為を反省してもらいます」
これは不可抗力というか、
「雪乃さん、あなたもです、他生徒への暴力行為、許されるものではありません」
「っ!」
雪乃は何か言いたそうにしたが、諦めたかのように無言で立ち去った。
僕はゆっくりと押し寄せてくる顔の痛みに耐えながら、果てしなく青い空を見上げた。空にはいつの間にか白い雲が一つだけ浮かんでいた。
「青と……白か……」
母さん、僕、
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