第31話 凱旋

凱旋

年が開けて1月10日

まぁやんと舞華は、北海道に引っ越した。

舞華は北海道を訪れるのは初めてであった。

新千歳空港を出ると舞華は驚きの声を上げた。

「うわぁ〜寒いねぇ」

「俺も久々だから、そう感じるな」

「わぁぁぁぁ!雪だぁ!」

「おい!あまりはしゃぐと転ぶぞ!」

空港を出て少し歩くと、遠くから声が聞こえた。

「まぁーやーんさーん!」

学園の関口さんであった。

「関口さん、わざわざ迎えに来てくれて、ありがとうございます!」

「いいのよ!ちょうど千歳に用事あったから。ついでよ!つ・い・で!」

「あっ!紹介します。俺の婚約者で白金舞華です。舞華、こちらは俺が育った興正学園の学園長で関口佳奈さん!」

「白金舞華です!初めまして!」

「興正学園の学園長をしております、関口佳奈と申します」

関口さんはマジマジと舞華を見た。

「え!どうしました?」

「ふふーん。そっか、そっか。恋ちゃん嫉妬しそうだ」

ぼそっと独り言を言った。

「ん?なんか言った?」

「ううん!なんも!じゃっ行こうか」

3人は車に向かって歩き出した。

(恋ちゃん嫉妬?恋ちゃんって確か…)

車に乗り込むと、関口さんが

「そういえばまぁやんさん。恋ちゃん喜んでいたよ」

「あぁ、そうだね。もうすぐだね」

舞華はなんの話か気になった。

「ねぇ、何の話?」

「あぁ、わりぃ。今年な、妹の恋が成人式なんだ。それで俺が晴れ着をプレゼントしてやったんだ」

「へぇ〜!いいお兄ちゃんだね」

「もうひとりの龍弥ってやつは、知り合いの美容師を手配して、着付けとヘアメイクを、もうひとり…実の兄の康二と一緒に成人式に参加するんだって」

「そうなんだ。素敵な話し!」

「そっか?やっぱ妹って可愛いじゃんか」

「私は一人っ子だから、わからないなぁ」

「お前にも出来るよ。兄妹がな!」

舞華は嬉しそうにニヤついた。

1時間半くらい走って、まぁやんの新居に着いた。

「関口さん、ありがとう!」

「落ち着いたら顔出してね」

「りょーかい!」

「舞華さん、またねー」

「はーい!またー」

そう言って、関口さんは走り去った。

「よーし!もうすぐ引っ越し屋さんがくるから、掃除しちゃおう!」

「うん!」


まぁやんと舞華はその日、引っ越し作業に追われた。

まぁやん達の新居は、学園からもほど近いところである。

その場所にした理由はもう一つ…

「おーいまぁやん!手伝いに来たぜ!」

「久しいな!龍!」

ふたりはがっちりと握手した。

龍弥の後ろには美紀がいた。

「あれ?君が美紀ちゃんかい?」

「はい!まぁやんさん!お久しぶりです!」

「いやー大きくなったなぁ」

「やだな!あの時から3年くらいしか経ってませんよ」

「そっか…でも綺麗になっちゃって!龍弥にはもったいないな!」

「うっせーわ!」

「あ!舞華!こっちきて?」

奥から舞華が走ってきた。

「俺の婚約者で舞華だ。舞花、こっちが俺の同い年の弟で龍弥、こっちが龍弥の彼女で美紀ちゃん」

「初めまして。舞華です。龍弥さんのお話は色々と伺ってました。お会いできて光栄です」

「あ…あぁ、龍弥です。それにしてもさぁ、舞華ちゃんってお嬢様みたいだね」

「えぇ!初めて言われましたよ」

「美紀さん、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします。わからない事とかありましたら何でも言ってくださいね。わたし達も近所に住んでますから」

「嬉しい!もうお友達が出来た感じ!」

4人はせっせと片づけを進めた。

「まぁやん、今日恋ちゃんは来ないの?」

「あいつは今、大学のゼミで来られないみたいなんだ」

「そっか…会いたかったな…」

「成人式後に会おうと思ってな!」

「うん!楽しみ!」


片付けがあらかた終わり、4人はお寿司を出前で頼んで、軽い引っ越し祝いをした。

「んん〜!美味しいぃ〜!さすが北海道って感じだね」

「なぁ、まぁやん…お寿司、何人前頼んだ…んだ…?」

「ん?7人前だけど?」

「いや、めちゃくちゃ多いじゃん!」

「大丈夫!舞華が全部食っちゃうから」

「舞華さんが…?」

「こいつさぁ、痩せの大食いってやつだ」

「んん〜このエビ!ぷりっぷりで甘ーい」

「そいつは車海老だな」

「でもまぁやんさん…流石に3人前は…」

「こいつと回転寿司に行くとやばいぞ!1人で25皿近く行くから」

「……」

「そしてそのあと、しっかりデザート食うから」

「…すごい…というか…まぁやん、財布大変だな」

「…まぁな…」

そして話題は恋と康二のことになった。

「美紀ちゃん、恋はちゃんとやってるか?」

「はい!あの子、今イキイキしてます」

「へぇー!ちなみに何で?」

「あの子の将来です。これは私の口から言えないので、恋と会ったらあの子から報告があると思います」

「そっか。わかった。美紀ちゃん、恋の友達でいてくれてありがとうね」

「いえ…」

「おまっ!何頬赤らめてるんだよ!まぁやんも人の女を口説くんじゃねぇ!」

「ははははは!龍が慌ててるぜ!オモロ!」

その間も、舞華はお寿司を頬張っていた。

「…それにしても、舞華ちゃん…食べるねぇ」

「うん!美味しい!」

「あはははは!舞華さん、面白いぃ〜」

「だろ?この食べっぷりは見てて飽きないんだ」

舞華は龍弥、美紀と仲良くなった。


成人式当日。

恋は早起きして、着付けをやってくれる美容室へ行った。

「恋、おはよぉ」

「おはよぉ。美紀。眠いね…」

「うん…」

「はーい!お待たせ!着付けしますよ」

恋はまぁやんが買ってくれた振袖を初めて見た。

「…はぁ…綺麗…」

「うわぁ!ほんと綺麗だね。恋、早く着てみて!」

「うん!」

恋は着付けしてくれる人ふたりがかりで着た。

「もっと苦しいかと思ったけど、そうでもないね」

「えー!私はきつかったよ」

「美紀のは、幸せ太りだね」

「うるせー!」

ふたりは無事に着付けとヘアメイクが終わり、外に出た。

康二と龍弥が待っていた。

「おぉぉぉー!綺麗だね2人とも」

「すげーいいよ!うん!いい」

「そんなに見ないでよ…恥ずかしい…」

「よし!写真撮るべ」

「まぁやんが来られなかったのは残念だったけど、仕方ないな」

「わたし、まだまぁ兄に会ってないんだよな…」

「確か、成人式終わったら連絡するって言ってたぞ」

「そっか…この晴れ着姿見てもらいたかったけど…仕方ないか」

恋は少し残念そうな顔をした。

「ったく!あいつも気ぃ効かないよな!恋、会ったらぶん殴ってやれ!」

龍弥が恋の頭をポンポンしながら戯けた。

「そだね!シュッシュ!」

「これ!帯ずれるでしょう!」

「あっ…すみません…」

『わはははは』

4人で参加して、賑やかな成人式となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る