第15話 事件勃発
澤先輩の家は、古いアパート2部屋をつなげた部屋。
おじいさんが大家らしく、澤先輩以外は誰も住んでいないので、今は溜まり場と化していた。
『コンコン』
「おーう!入れよ!」
「おじゃましまーす」
初めて入る澤先輩の家…
しかし、イメージとは全く違い、異質なものだった。
パーティーと聞いたのでもっと華やかな、楽しいイメージだったが、何かがおかしい。
壁にもたれかかってぼーっとしてる人、他の人の目も気にせずにSEXに勤しむカップル、何言ってるかわからないくらいヘロヘロになっているグループ。
「澤…先輩?これは…」
「あん?パーティーだろ?DRUGパーティーだよ」
「ドラッグ…」
「なーにビビってんだよ。この錠剤だよ。飲めばなんでもハッピーだぜ」
恋たちは一気に興醒めしてしまった。
「先輩…わたしたち…やっぱ帰ります」
「おーっとダメだよ。ここから出るにはな、ここでクスリをやるか、このクスリを友達に売ってくるか、ここで俺にヤられるかの3択だ。選べよ」
「恋…どうする?」
「ヤバくない?」
(この3つから選ばないとだめ。一番マシなのは…)
「わかりました。クスリ売ってきます」
「あーあ!やっぱりそれ選ぶか。俺はヤレる方が良かったんだけどなぁ。へへへへ」
そう言いながら数袋のドラッグを渡してきた。
「とりあえず、これ一粒5000円で売ってこい。次欲しいって言ってきたら俺に繋げ。簡単だろ?」
「…わかりました」
「よーし!行ってよし!だけどここの事チクってみろよ!俺のバックがお前らやお前らの家族をめちゃくちゃにしてやるからな!」
「恋…ごめん…私が安易に澤先輩の家に行こうって言ったせいで…こんな…」
「ううん。違うよ。これはみんなで決めた事。美紀だけの責任じゃないよ」
恋たち6人はふらふらと歩き、いつもの溜まり場の公園に着いた。
喉がカラカラだったので、ジュースを買ってみんなで一気に飲み干した。
「ねぇ…それどうする?」
澤からもらった袋には、カラフルな錠剤が多数入っていた。
「警察に届けようよ」
「だめだよ!あいつのバック、確か本筋だったはず」
(もしチクったら、わたしの学園もめちゃくちゃにされちゃう…それだけはだめだ!)
恋は思った。
「ここのトイレに流しちゃおう。お金はなんとかなるから。売ったって事にすれば」
「そうしよう」
みんなで袋から出してトイレに流した。
袋もバレたらまずいからっと全て持って帰った…つもりだったが、一枚だけ落としてしまっていた。
みんなそれに気づいていなかった。
後日、恋が澤にお金10万円と袋を渡した。
「へー結構早く捌いたんだな」
「は…はい!頑張りました」
「んーと…あれ?袋1枚足りないな?」
「え?そんなはずは…」
「まぁいいや、ご苦労さん」
澤はお金を持っていなくなった。
「はぁ〜!良かった〜」
恋は腰が抜けたように尻餅をついた。
近くで隠れて見てた美紀たちも来て、恋をひっぱり起こした。
「よかったね。うまく行った」
「うん」
「これで、あとは徐々に距離をあけていこうね」
恋たちはホッとしてそれぞれ家路に着いた。
その日の夕刻
恋の携帯に美紀から着信が入った。
☎︎「もしもーし」
☎︎「…おう…よくも騙してくれたな…」
☎︎「え?澤…先輩?」
☎︎「恋!来ちゃだめ」
☎︎「うるせ!」
☎︎『バシッ』
☎︎「美紀!美紀!」
☎︎「テメェも探し出してやるからな。覚悟しろよ」
☎︎「恋!逃げて!」
☎︎『ブツ』
電話が切れた。
(やばい…殺される…)
そう思った恋は、バックに必要なものを詰め込んで、学園を出ようとした。
関口さんが今日も恋を止めようとした。
「恋ちゃん!どこ行くの?」
恋の顔は真っ青になっていた。
それに関口さんは気づいた。
「恋ちゃん!どうしたの?何かあったの?」
「佳奈さん…ごめんなさい。逃げてください」
「えっ?」
恋は関口さんの手を振り解き、走り去った。
「あの子、今佳奈さんって…」
何か良くないことが起こってる。
しかも今日はまぁやんと龍弥が学園に来る日だった。
佳奈さんはまぁやんの携帯に電話したが、圏外だった。
龍弥も同様だった。
恋はとにかく普段行かないところへ行こうと思った。
電車に乗って、出来るだけ遠くに行こうと思った。
お兄ちゃんにも迷惑かけられない。
恋は駅のホームのベンチで俯いて座っていた。
「わたし…どうなっちゃうの…」
すると恋の携帯が鳴った!
恋はビクッとした。知らない番号である。
試しにそっと出てみた。
☎︎「…はい…」
☎︎「もしもし!恋か?」
聞き慣れた…懐かしい声が聞こえた
☎︎「まぁ兄?」
☎︎「そうだ!久しぶりだな。ごめんな。全然連絡しなくて。今なぁ、空港なんだ」
☎︎「まぁ兄、帰ってきたの?」
☎︎「おうよ!お前に会いにな!龍も一緒だぞ」
☎︎「恋!聞こえるかぁ?」
☎︎「龍兄…」
☎︎「お前、今どこにいるんだ?」
☎︎「○○駅のホーム」
☎︎「おっ!ちけーじゃん!そこで待ってろ」
☎︎「うん…あのね、二人に話したいことがあってね、わたし…」
とその時遠くから
「いたぞぉ〜!あいつだ!」
見覚えのある、澤の仲間であった。
恋を見つけると取り囲んで、連れ去ろうとする。
「きゃーやだ!やめて!離して!」
☎︎「おい!恋?恋!」
電話はそこで切れた…
「おい!まぁやん、何かやべぇぞ!」
「まずは恋のいた○○駅だ!急ぐぞ!」
まぁやんと龍弥は走った!
駅に着くと、周りは騒然としていた。
『警察呼んだ方がいいかな』
『駅員さん、さっき女の子が…』
まぁやんは周りを見回したが、それらしいものは残ってなかった。
「やべーぞ。まぁやん」
「しゃーねーな!ちょっと待ってろ」
まぁやんはどこかに電話をかけた。
☎︎「おう!久しいのぉ!まぁやん」
☎︎「久しぶりだな。雷斗。すまん!今ちょっと急いでるんだが」
☎︎「ん?どうした?そんなに慌てて」
☎︎「実は、変な奴らに俺らの妹が拉致されたかもしれないんだ」
☎︎「なにぃ?恋ちゃんがか?」
☎︎「すまないが、ちょっと情報仕入れてくれないか」
☎︎「任せとけ!すぐ手配する」
☎︎「悪いな。落ち着いたらゆっくり話そう」
☎︎「了解!じゃあ少し待ってろよ」
「なるほど。蛇の道は蛇ってやつか」
龍弥はまぁやんの機転に関心した。
「ばか!感心してる場合か!俺らは俺らで探すぞ!」
「おう!」
まぁやんと龍弥は必死になって、恋の行方を追った。
その頃学園では、関口さんがオロオロしていた。
そこに見知らぬ男4人が学園を訪れた。
「上田恋ってやつ、ここにいるだろ?出せよ」
「何よあんたたち!いないわよ!」
「姉ちゃん、隠すと身のためにならないぞ」
「もし例え居たとしても、あんたたちみたいな人と恋ちゃんが関わるはずないんだから。取り継がないわよ!」
「なんだとー!」
そこにある女性が後ろから歩いてきた。
苑香さんである。
苑香さんは、関口さんと仲良くなって、たまに学園を訪れていた。恋の非行のことも相談していた仲であった。
「佳奈さーん!今日も来ちゃった!」
「苑香さん!来ちゃダメ!」
「ん?誰?こいつら?」
「おめぇこそ誰だよ」
「私は彼女の友達」
「舐めんじゃねぇ…」
男は苑香さんの襟をつかもうとした時、動きが止まった。
「あんた…もしかして…」
「うん!そのもしかして…かもね!」
笑顔で苑香さんは男に言った。
「いや…その…すんませんでした…」
男達は素早く退散した。
「え?え?どうして?」
関口さんは呆気に取られた。
「あぁ、言ってなかったっけ?うちの人ね本筋だから」
関口さんは目を丸くして
「えぇぇぇぇっ!」っと驚いた。
「そうだ!こうしてはいられない」
関口さんは恋に電話をした。
だが電話は圏外だった。
そしてまぁやんに電話を入れた。
☎︎「もしもし!興正学園の関口です」
☎︎「あ!どうも!ごめんなさい。今ちょっと手が離せなくて…」
☎︎「恋ちゃんに何かあったんですね」
☎︎「大丈夫。俺が何とかするから」
☎︎「こっちは学園で待機してます」
☎︎「お願いします」
恋に関わる人全員で、恋の行方を探した。
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