10話.[大丈夫だよね?]

 まだまだ夏休みが終わるまでには時間がある。

 ただ、なんというか学校のときの方が会えたときの嬉しさが高い気がした。

 連日長時間一緒にいられてありがたみが薄くなってしまっているような……。


「課題、もうちょっとで終わりそうだね」

「一緒にいてもこればかりだから当たり前」

「あ、あれ? なんかちょっと……不機嫌?」


 ではなく、全てはこれのせいだ。

 どこどこまでやるまでなにもしないを決めているらしい、また、仮に終わってこちらを求めてきたとしても少し触れて終わるだけだから困ってしまう。

 前みたいにこちらから抱きついたりするとすぐに慌てて「は、離して」などと言ってくるから本当に……。


「付き合っているのに手を繋ぐぐらいじゃ物足りない」

「いやいや、付き合えば毎日そういうことをするというわけじゃないから」

「初めてじゃない?」

「初めてだけど、だけど初めてだからこそネットとかを参考にして気をつけているという形になるかな」


 ネットの意見なんかいらない、私が彼女なのだから私に聞いてほしい。


「よ、よしっ、終わったらかき氷でも食べに行こうかっ」

「ん」


 まあ、課題を終わらせておくことは後の自分のためにもなるから文句ばかり言っていても仕方がない。

 仕方がない精神でさっさと終わらせ、部屋着から着替えようとしたところで抱きしめられて固まった。


「だ、大丈夫だよね?」

「……せめて正面からしてほしかった」

「あ、ご、ごめんっ」


 なるほど、確かに相手からされるというのは違うということが分かった。

 私でも、一瞬だけでも固まってしまうような行為だ。

 しかも部屋着な分、学校のときと違って何枚も着ていないからやはり変わる。


「着替えるから部屋の外で待ってて」

「わ、分かった」


 さすがにこのまま外に行こうとは思えない。

 お出かけ用に服を買ってあるならそっちを着なければもったいない。


「貴一」

「ん――な、なんで水着なの!?」

「ふふ、そういう反応ができる貴一が一番好き」


 可愛いとも言ってもらえたけどなんとなくこれで驚いてほしかった。

 いつまでもそんなアホなことをしても仕方がないから今度こそちゃんと服を着て家の外に移動する。


「プールの日はあれが足りなかった」

「テンションを上げたら宮守さんに倒されるからね……、隠していたんだよ」

「それなら私と上刈で莉杏から守ってあげる」

「い、いや、そうなる原因を作らないように気をつけるよ」


 そうか、なら守るような機会はこなさそうだ。


「それに俺がりんちゃんを守らないとね」

「いや、貴一は守られる側」

「えぇ」


 私の方が絶対に強気で行動をすることができるから。 

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