駅の黄線

佐武ろく

駅の黄線

駅に伸びた黄色い線。

それは通勤時に通る何気ない線。

でも目が不自由なあの人を導く優しき線。


駅に伸びた黄色い点字の線。

それを越えれば新たな環境へと向かう旅立ちの線。

でも久しぶりに帰る懐かしき想い出の線。


駅の見慣れた黄線。

愛しき我が子、友人、恋人、家族との別れの線。

でも同時に懐古の笑み、安堵の顔、ちょっと疲れた表情、再会の線。


様々な想いがその線を越える。

そこには色々なドラマがある。日常がある。


でも時に、それは決して超えてはならない一線。

現実に苦しみ、辛さに悶えようとも。未来が見えなくなろうとも。

それは超えてしまえば永遠の別れを迎えてしまう線。


「まもなく列車が到着いたします。黄色い線の内側までおさがり下さい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

駅の黄線 佐武ろく @satake_roku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説