ゾンビ、それは神に選ばれた存在

 遊び感覚でゾンビを殺していた連中は、奇襲にあってゾンビの波に飲まれた。

 人間の気配のなくなった街では、ただただゾンビが闊歩する。



(以下、日本語で記されますが、本当はゾンビの言葉で話しています)



「目に物見せてやりましたよ。先輩」


「そうだね。ゾンビを舐めたことを、ゾンビになってじっくり後悔してほしいね」


「やっぱり、ゾンビって神に愛されてますよね」


「ん?」


「だって、神に愛されでもしてないと、ゾンビにはならないでしょ」


「ごめん。ちょっと理解が追いつかない」


「いや、普通は人間死んで終わりですよ。でも、俺たちは復活してるわけじゃないですかー」


「ゾンビとしてね」


「でも、生き返ったわけですよ」


「君は生き返ったと認識しているのかい」


「セカンドキャリアって奴です」


「ポジティブが過ぎるよ!」


「そうですかねー? 今、流行りの異世界転生だったら、俺らアタリですよ!」


「ハズレだよ! 何でゾンビに転生して喜ばなきゃいけないんだよ」


「でも、成り上がりモノ、人気ありますよ」


「にしても、だよ! 転生先、ゾンビは紛うことなきハズレクジだよ。福引のガラガラだったら白玉だよ」


「あ。あのガラガラって『新井式回転抽選器』って言うらしいですよ」


「へぇー。あれに名前あったんだ……いらねぇー。その情報、いらねぇー!」


「いや、先輩。そんな頭ごなしに否定されると、そもそもこの会話の必要性みたいな話になっちゃうんで……」


「あぁ、そうかそうか。ごめんごめん。なんか、熱くなってごめんね。つい勢いで……」


「いいんすよ……」


「……」


「……で、神に愛されてる話ですけど」


「まだ、続いてた?」


「続いてますよ! 全然、途中ですよ」


「あーそう。テンポ的に終わったと思ってたから……で?」


「先輩、納得してないですよね?」


「してないね」


「これは、俺と先輩の認識の違いのせいだと思うんですよね」


「なるほどね。何をもって神に愛されるかが、違うってことね」


「奇跡って思えることが起きた人は、神に愛されてますよね」


「まぁ、そうだね」


「なら雷に打たれた人は?」


「それは、愛されてはないよね。不運だもん」


「でも、雷に打たれて生きてたら?」


「愛されてるかもね」


「飛行機事故にあった人は?」


「不運でしょ」


「からの、無傷の生還!」


「愛されてるね!」


「その理屈で言うとですよ。ゾンビに噛まれるだけだと不運で終わりですけど、そこから復活したら、神に……愛されてるってことですよね」


「ああ〜……とは、なんねぇーよ!」


「どうも、神に愛された男、ゾンビです!」


「やかましーわ! ゾンビになった段階で、神に見放させとるわ!」


「見解の相違って奴ですかね。でも、俺は先輩の考え方も正しいと思いますよ」


「どこの視点からの言葉? なぜ君はそんなに上から来れるんだい?」


「……」


「……だいたいさ。神様とかって」


「あ、先輩。もうその話題、終わってるんで」


「えぇー! 今のは続く流れじゃないか?」


「もう、大丈夫っす」


「なんか、僕が欲しがってるみたいになってるやん」


「なんっすか、じゃあー続けますか?」


「もう、いいわ!」


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