Crossing World

夜月でんぱ

第1話 魔王軍幹部

魔王、それは古来より最もメジャーな悪役とされてきた一人だろう。




有象無象、天地万物の様々な魔物を従え、人類と対抗し、各地にその地の守護者であるボスモンスターを配置する。



...それが、コレである。


「おいおい、その手はないだろう。」


「いくら魔王様のご指示とあってもそれはできませんね~、チェックメイト...!」


「うぬう、まさかこの我がこれほどまでの小者にここまで追い詰められようとは...」


魔王城内部、テラスで繰り広げられる、幼女とキメラの激闘(チェス)。

今日も魔界は平和である。



=================================


魔族は古来より最もメジャーな悪役とされてきた一族である。

だがそれには幾つかの理由がある。


一つ目はその人類とはかけ離れた容姿と能力があるというだけで迫害され、恐怖心を抱かれていたことによるもの、

そして二つ目は、勿論魔族達もそんなことをされては黙ってはいないので、自己防衛心と家族を殺された怒りの基、人類に抵抗するようになったということの二つである。


つまり人類の勘違いだ。


本来魔族は一部の例外を除き何もしなければおとなしく、食事も果物で十分事足りる、それに人類と同等、またはそれ以上の知能を持っている魔物もおり、人類がそんな先入観さえ持たなければ人類と魔族は共存できていた筈だった。

そのまま経つこと830年、その虐殺紛いの行動は今でも続いており、やっと魔族の怒りが収まり冷静になり、ここを国として成立させよう、ということで魔王が誕生した。

魔王、それを聞けばきっと巨大で屈強な体をした強面の男を想像するだろう。


しかしそれは違う、それは「魔王=怖い、強い」という人間が考えた概念にすぎない。

勿論魔王は強くてはならないが怖い、なんて要素は必要ないのだ。

なにせここには魔法、という概念がある、物理攻撃よりも強く相手に近づく必要もない、それに体を無駄に大きくして敵の攻撃に当たりやすくなる必要もない。



そしてその理論の結果、魔王に選ばれたのがあの幼女、ではなくその幼女に乗り移っている魔女「ラミア」だ。

彼女曰くあの身体は魔力潜在値も高く身長も低いので最適な転生体だそうだ。


少しその身体の自分を楽しんでるのは内緒だ...、おっと誰か来たようだ。


==============================


どうしようか、ここで繋がる一手を出さなければいずれ敗北する...。


...やけに強い風だな、盤がひっくり返ってしまうではないか、盤を...、ひっくり返す...。

...そうか!、この一手で...!


パン、と勢いよく駒が置かれる、...前に、




「魔王様!」




空から飛行してきたキメラによって強い風が吹き盤が実際にひっくり返ってしまった。




「......要件は?」

苛立ちながらも冷静に。



「「勇者」と名乗る能力潜在値が高い者がアリアの洞窟に踏み入り魔物たちを虐殺し下層へと進んでいるようです!」




「な...、に...!」




その瞬間さっきまで煮えたぎっていた頭は一気に思考を停止し冷めきった。


魔物の無差別殺戮、それは今までもあった。

だがそれは主に都市の近辺、魔物が都市の近辺に出現したとあれば討伐されるのは致し方ないだろう。


しかし、我々は何をしたというわけでもなく、ただただ平穏に洞窟でひっそりと暮らしていただけなのに...!


「許せない!!

この私が即刻ぶっ殺してやる!!」


「お待ちください魔王様!」

「今魔王様が行ってしまわれたらこの王国がどうなるのか分かっているのですか!

やっと民達が冷静を保てるようになったのに今魔王様が行ってしまわれたら魔族と人類で全面戦争が起きてしまいます!」


「いや、だがしかし見殺しにするわけには...!」

「もしそうなれば勇者による被害者とは比べ物にならないくらいの死者が出てしまうのですよ!」


「しかし...!、うぐ...、わ...、分かった...。

...しかし勇者を許してはおけぬ!

2次被害が出ぬよう緊急作戦会議を開く!!、四天王を呼んでまいれ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る