第2話 連絡は早めにお願いしますよ?

朝目が覚めると見慣れた天井が見えた。


(久しぶりに見たな)


数ヶ月間は見ていなかった夢を思い出す。

もう、再会なんて諦めたんだけどな……。

諦められてなかったのかね……。

ため息を吐きながら起き上がる。




§


『今日からルームシェアの相手と暮らしてもらうが、大丈夫だろう?』


朝食を食べた後、俺、神崎綾斗かんざきあやとの父親、神崎空斗かんざきそらとから電話がかかってきたらこんなことを言ってきた。

ちなみに俺の父親は外交官で、ただ今イギリスにいる。母親は小説家で、普段は仕事用に買ったマンションで過ごしている事が多い。

俺は突然のことに「ほぉあ?」と間抜けな声が出てしまった。


「どゆこと?」

『うむ、私の友人の子が日本に留学したいそうでな。だが住む所が見つからなかったらしい』

「……で?うちの家を薦めたと?」

『そうだ』


そうだではないのですが?と言うか何故?何が目的で?


『お前の気持ちは分かる。だが、もう住むことで決まってしまったんだ。許せ』


うん、許せじゃない。なんなのこの人?まぁ俺の父親ですが。


「あのさぁ、急過ぎるとは思わないの?あと、こっちに一度連絡してから決めることだと––––」

『すまん、仕事が入ったから切る。頼んだぞ』

「あ、こら。逃げんな」


切られたし……。頼んだぞじゃないんですが?だいたい、いつ来るのかも聞いてないのですが?

などと思いながら着替えて学校に行くことにした。



§



俺の通ってる翠明高校は、世界的に有名だ。なぜなら、外国からの留学生を多く受け入れている事と、その分偏差値が高い事だ。

留学生が多いため、外国語の授業では英語だけでなくロシア語、フランス語、中国語など多くの外国語を最低でも3つ選んで受ける。

俺?俺は英語、フランス語、ロシア語だよ。

昔、父親に基本的な事は教わったからね。

などと言ってる間に学校に着く。

校舎はそこそこ新しく、敷地もかなり広い。どのくらいかと言えば、東京ドーム10個分以上あるとかないとか。校庭3つに体育館2つ、あと端っこに弓道場とテニスコートがある。2つある体育館のうち、1つは2階建てで2階に体育館、一階に柔道場、剣道場、レスリング場、フェンシング場などがある。

広さおかしいよね、この学校。


教室に着き、窓側の1番後ろの自分の席に座る。席は学期始めの籤引きで決める。

一度決まったら1年間はその席のまま過ごすのだそうだ。


「おはよ、綾斗」


特にすることもなかったため、本を読んでいたら、1人の男子生徒が話しかけてきた。黒髪に少し黒い肌で、割と大柄だ。

名前はグラン・高坂。ブラジル人と日本人のハーフで、俺の数少ない友人でもある。


「ん、おはよ。グラン」

「朝から読書か。本当に本が好きだな、お前」

「まぁな。でも、朝はこれぐらいしかする事ないしな」

「けど、ずっと読んでられるお前の集中力すごいよな」

「そうでもない気もするが、まぁこの話も何度目かわからないくらいしてるのでパス」


毎朝の様に言われていることをスルーして、読書に戻ろうとする俺をグランは止めた。


「まぁ待て。そんなお前が興味持ちそうな話があるんだよ」

「ほぉ、それは?」


どんな内容か気になり聞いてみる。

グランはニヤリと笑いながら、言う


「今日、転校生が来るらしい」

「マジで?」


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