第89話 発売日
時の流れというのは早いもので、俺たちが取材を受けた雑誌の発売日が翌日に迫っていた。
告知したSNSの反応は上々である。
《この表紙の二人カッコ良すぎだろ》
《絶対買いに行きます》
《おい、もうコンビニ置いてあるとこあるぞ》
表紙は俺と莉央のツーショットが大きく飾られている。
『天才×天才・高校生プロゲーマーの素顔』
そんな煽り文句で全面的に押し出されているようだ。
そして、発売日。
俺はSNSを開く。
「何じゃこりゃ」
その反響は想像以上なことになっていた。
SNSのトレンドは俺と莉央関係で5位まで埋まっている。
《近所のコンビニ売り切れだったんだが》
《コンビニ4件ハシゴしてようやくゲット!》
《これは買う価値ありです》
どうやら、コンビニでは軒並み売り切れになっているようだ。
SNSでは買えなかったという声が上がっている。
10時オープンの書店には、謎の行列ができるという状況にもなっているようだ。
SNSの状況をチェックしていると、俺のスマホに白瀬さんからの着信があった。
『お疲れ様です。高森さん、今大丈夫ですか?』
「ええ、大丈夫ですよ」
『今日発売の莉央さんとの雑誌、凄いことになっていますよ』
「みたいですね」
アジア大会優勝の効果に加え、莉央のルックスは男女共に人気がある。
『それで、早速なんですけど、今回の雑誌の増刷が決まりました』
「マジすか」
『ええ、もう全国から増刷依頼が来ているらしくて……』
今回、俺と莉央の知名度も考慮して多めに発行していると聞いていた。
それでも追いていないという。
「やっぱり、莉央のルックスは強いですね」
『それもそうですけど、高森さんも居たからこんなに爆発したんですよ』
「それなら、良かったです。白瀬さんにはまた負担かけちゃいそうですね」
これだけ社会現象のようになっていたら、事務所への問い合わせも凄いことになっているだろう。
『いえ、それが私の仕事ですから。それより、今回は影響力ランキング上位入るかもですね』
「そんな、僕なんて全然ですよ」
影響力ランキングとは、10代から30代を中心としたトレンドに大きな影響力を持つとされる人のランキングである。
テレビや雑誌などのメディアへの露出が増加し、国民的知名度が増加しそうな人物。
自らトレンドを作り出し、注目を集めている人物。
発信することによって、世間を盛り上げている人物など、さまざまな選出基準が存在する。
確か、下半期のランキング発表がもう少しだった気がする。
『私は、期待していいと思いますけどね』
「じゃあ、ちょっとだけ期待しときます」
莉央ですら、上位にはなったことはないランキングだ。
俺がそこに食い込める気がしないが、少しだけ期待してみた。
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