第88話 誰かの為に頑張る君へ

 雑誌取材を終えて、解散となる。


「莉央、今日うち来るんだよね?」

「うん、柚月ちゃんから誘われたからね」


 今日は莉央が俺の家で食事する事になっていた。

あれから、時々うちで食事をしてるうちに柚月とも仲良くなり、頻繁に連絡を取っているようだ。


「じゃあ、帰りますか」

「うん!」


 俺たちは並んで歩き出す。


「諒、最近いい顔するようになったよね」

「そうか? まあ、莉央と出会ってから色々あったからな」


 莉央との出会いは間違いなく俺を変えてくれた。

それは自分でも分かっていた。


 まさか、自分がまた世界を目指して表舞台に立つなどとは思ってもいなかったが。


 電車に乗って数十分、最寄駅に到着する。


「莉央さんいらっしゃい!」


 家に帰ると柚月が出迎えてくれる。


「お邪魔します。誘ってくれてありがとう」

「こちらこそ来てくれてありがとう」


 玄関に靴が置いてある事から、今日は親父も帰って来ているらしい。


 また親父は大きな事件を解決してきたらしい。

変わらないなと思う。


「おかえり」

「ああ、ただいま」

「莉央さんもいらっしゃい」


 親父が散らかっていた書類を片付けながら言った。


 そこから、柚月が腕を奮った料理が並べられた。


「莉央さんこれ買ったよ!」


 柚月が莉央がプロデュースしているコスメを見せた。


「え、ありがとう! なかなか手に入らなかったでしょう」

「うん、結構お店回って買ったんだよ」


 莉央はアパレルからコスメなど幅広く仕事を受けている。


 莉央がプロデュースしているコスメブランドは売り切れが続き、入手困難と言われている。


「莉央さんは色々やってて凄いなぁ」


 親父が酒を煽りながら言った。


「私なんか全然ですよ。お父様だって私からしたら凄いですよ。ニュース、見ましたけど」

「あー、やっぱりバレちゃうよね」


 ニュースなどの情報番組では、『捜査一課長執念の捜査』などと取り上げられていた。


「凄いですよ。大きな敵に立ち向かってて」

「俺は、特別な存在なんかじゃないよ。誰かの為に頑張っている全ての人と同じ存在だ」

「誰かの為に頑張っているですか」

「そう、莉央さんや諒、柚月だってその1人だ」


 莉央や俺の動画を楽しみに待ってくれている。


 柚月も学業が忙しくても、家事をしてくれている。


 誰もが誰かの為に頑張っているのだ。


「俺は俺の仕事をする。だから、莉央さんや諒にはファンに夢を見せ、笑顔にさせる存在であって欲しいと思うんだよ」


 そう言って親父は酒を流し込む。


「なんて、ちょっと先輩面しすぎちゃったかもだがね」

「いえ、凄く響きました。これからも頑張ります!」

「ああ、諒の事よろしく頼むな」

「はい!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る