第80話 アジア大会の幕開け

 家を出て駅へと向かう。

駅で莉央と待ち合わせていた。


「お待たせー」


 莉央が小さく手を振りながら近づいて来た。


「おはよう」


 莉央はいつもと変わらぬ様子だった。


「緊張していないの?」

「正直、めっちゃ緊張してるよ。でも、ここまで来たらもうやるしかないでしょ」

「そうだよね。流石に俺も緊張してる」


 今日の大会で世界大会へ出場できるかどうかが決まるのだ。

難敵が集まる大会でもある。

緊張もするしのも当然であろう。


会場までは30分ほどの距離だ。

電車の中で今回の作戦を話していた。


 「ふー」


 俺は大きく息を吐いた。

何度経験しても大会という緊張感は慣れることは無い。


 いよいよ、アジア大会開始される。

この予選で、半分以上プレイヤーが脱落することになるだろう。


 莉央と俺は今でも毎週生配信をやっている。

そこでは、プロホプルだけではなく色んなゲームをやっているが、顔出しをしているという所もあり、チャンネル登録者も同時接続者も急激に伸びてきている。


 莉央のチャンネルは登録者が185万人を超え、俺のチャンネルは200万人という大台に乗った。


 俺は再び大きく息を吐く。


 今回のアジア大会も観客と共に、リュアーグのチャンネルで生配信をしている。


 生配信も、同時接続が23万人というとんでもない数字を叩き出していた。

前回の日本大会の時のタカモリ莉央のプレイ切り抜きが各SNSで大拡散されていた。

きっとそれで今回のアジア大会も注目されているのだろう。


「まだ緊張してます?」

「やっぱりね。この雰囲気は何回経験しても慣れるものじゃないよね」

「私もやっぱ緊張する」


 莉央の手は少し震えているように見える。

無理も無い。俺たちが目指しているのは世界大会。

ここで世界大会への切符掴めるかどうかが決まる。


「俺たちの番みたいだな」


 最後に俺たちの順番がやって来たので、会場に入場する。

そこで会場からは黄色い歓声が上がる。


 この感じ、久しぶりだ。


「手を振ってあげよ」

「そうだな」


 莉央が小声で伝えてくる。

すでに莉央は観客とカメラに向かって微笑みを浮かべながら、手を振っている。

さっきまでの緊張が嘘のようだ。


「やっぱり慣れてるな、莉央は」


 俺も小さく手を振る。


「「「キャァーーー!!」」」


 観客たちからは大きな歓声が上がった。

配信の方も盛り上がっているようである。

コメントが目には追えないくらいの勢いで流れ続けていた。


「アジア大会、やってやりますか」

「おう、頑張ろうな」


 俺たちは拳を合わせた。


 そして、俺と莉央は隣合わせに、席に座る。

正面にはハイスペックなPCが置かれている。

今大会用にスポンサーの企業が用意したものだ。


「うん、いつも通りにね」

「ああ、そうだな」


 もう2度と来ないと思っていたアジア大会。

俺はもう一人じゃない。


 心強い仲間と共に再び世界への挑戦ができている。

こうして、タカモリと莉央の伝説は幕を開けるのであった。

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