第74話 撮影終了

 クレープを食べ終わった所で、動画の締めを撮影する。


「これで、素材は全部撮り終わったね」

「そうだな」


 動画に使う素材は全て撮り終えた。


「その動画はどっちに上げるんだ?」


 莉央は2本のチャンネルを持っている。

登録者103万人の『莉央のゲーム実況チャンネル』と登録者66万人の『莉央の日常』だ。


 莉央の日常はサブチャンネルみたいに使っているらしい。


「莉央の日常の方かな。ゲーム要素ないし」

「まあ、そうだわな」


 今回の動画はクレープを食べているだけなので、ゲームの要素はほとんど無いと言っていい。


「帰って編集して、なるべくすぐに投稿できるよにするね」

「了解。俺もSNSで告知するよ」

「ありがと。諒の方では何か撮らなくても大丈夫?」

「俺はいいかな。日常投稿するようなチャンネル持ってないし」


 俺はメインチャンネルを一本運営しているだけだ。

登録者も順調に増え、今は300万人も見えて来ている。


「作ればいいのになぁ」

「でも、そんなにプライベート面白くないし」


 出かけると言っても、こうして莉央と出かけるくらいである。


「いや、諒のプライベート十分おもしろいでしょ……」

「そうか?」

「まさかの自覚なしパターン……」


 どうやら、俺の周りはおもろいらしい。


「今日は、帰るのか?」

「どっか行きたいとこある?」

「別にないかな」

「じゃあ、帰ろうかな。これ、早く編集して出したいし」


 俺たちは今日の所は帰宅することにした。


 電車に乗って莉央の家の最寄り駅で降りる。

莉央のことを自宅まで送って行くと、そこで別れた。


「じゃあ、なるべく急ぐからね」

「ゆっくり編集して大丈夫だよ」


 そんなに急ぎの案件でもないのだ。

帰路に就いて家に戻ると、パソコンを立ち上げる。


 そこから、プロホプルを3回ほどプレイした。

ちょうど終わったタイミングで莉央からメッセージが届いた。


『編集、終わったよ』

『はや!?』


 あれからまだ、4時間ほどしか経過していない。

なんという編集スピードだ。


『今日の21時に投稿していい?』

『大丈夫だよ』

『ありがとう。じゃあ、21時にプレミア公開するね』


 プレミア公開とは、動画を公開する日時をあらかじめ設定しておく機能である。

動画が公開されるまでサムネイルとタイトルが表示される。


 プレミア公開をすると、チャット機能が開放され、公開前から視聴者とコミュニケーションが取れる。

動画を普通に投稿した場合、コメント欄だけだが、プレミア公開とライブ配信だけがリアルタイムチャットが使える。


 視聴者の反応をリアルタイムで確認できるのがこの機能の利点とも言える。


「さて、どうなってますかね」


 俺は莉央のチャンネルまで行って確認する。

そこには確かに、プレミア公開が設定されていた。


 タイトルとサムネイルを見る。

サムネには俺と莉央のツーショットが使われていた。


「嘘だろ……」

 

 そこには目を疑うような数字が並んでいた。


『高校生プロゲーマー2人の原宿デート』


 34分後にプレミア公開 ・2022年11月25日 21:00


 ・30439人が待機しています

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